映画『クレイジー・リッチ!』がアメリカで大ヒット オール東洋系が受けた理由

映画『クレイジー・リッチ!』がアメリカで大ヒット オール東洋系が受けた理由

アジア人の俳優やスタッフで制作されたハリウッド映画『クレイジー・リッチ!』(日本公開は2018年9月28日から)がアメリカで大ヒットを記録しています。作品自体も興味深いのですが、文化やマーケティングの面からも意味が大きそうなので、ファッションを通してウォッチしてみたいと思います。

シンガポールを舞台に別格の大富豪一族の生活様式を紹介しました。一族の長男に連れられて、初めて彼の実家に触れた中国系女性の戸惑いが描かれています。ハリウッドの有力映画会社、ワーナーブラザーズの作品で、内容はロマンチックコメディと呼べるでしょう。原作はシンガポール系アメリカ人作家、ケビン・クワン氏が2013年に発表した小説『クレイジー・リッチ・アジアンズ』(原題:Crazy Rich Asians)。

北米での劇場公開スタート(8月15日)週末の興行収入は初登場第1位を記録しました。主演女優のコンスタンス・ウーは『タイムズ』誌の表紙も飾っています。見出しは「『クレイジー・リッチ・アジアンズ』がハリウッドを変える」で、関心の高さを示しました。早くも続編の映画化が有望視されています。

 

映画『クレイジー・リッチ!』がアメリカで大ヒット オール東洋系が受けた理由

この映画が話題を集める最大の理由は、主要キャストのほとんどをアジア系が占めている点です。メジャースタジオが製作した、本格的なハリウッド映画で、アジア系の俳優が主な配役を独占したのは、1993年公開の『ジョイ・ラック・クラブ』以来、25年ぶりとされます。ハリウッド映画では東洋人が主役を張るケースは少なく、人種バランスを取る配慮から、脇役に起用されるのが一般的です。

ダイバーシティー(多様性)の重要さが認められるようになってきて、2017年に公開された映画『ドリーム』では1960年代にアメリカ航空宇宙局(NASA)で働いたアフリカ系女性3人が主役として描かれました。史上初のアフリカ系スーパーヒーローが主人公の『ブラックパンサー』は18年2月に公開され、アメリカの興行収入で歴代3位という、記録的なヒットになっています。

アメリカでアジア系の人口が増えているから、アジア系の観客のおかげでヒットしたと見えてしまいそうですが、必ずしもそうとは言えません。もちろん、アジア系の観客は動員で貢献していますが、アメリカでのアジア系の人口は国民のわずか5%(2010年の国勢調査による)。つまり、アジア系以外のアメリカ人観客も呼び込んだから、映画はヒットしたわけです。実際、観客で最も多かったのは白人層だったそうです。

 

映画『クレイジー・リッチ!』がアメリカで大ヒット オール東洋系が受けた理由

『ドリーム』や『ブラックパンサー』、そして今回の『クレイジー・リッチ!』に共通しているのは、「プラウド消費」とも呼べそうな選ばれ方です。人種や民族、カルチャーへの誇りや自負がどの作品にもあふれています。そのプラウドなムードは、同じようなプライドを持つ人たちの共感を呼び覚まします。この場合、アフリカ系カルチャーがアフリカ系消費者だけを動かすわけではありません。人種や民族を越えて、人間同士の共感を呼ぶからです。

『クレイジー・リッチ!』ではシンガポールの富豪家を仕切る母(ミシェル・ヨー)が伝統的な華僑(在外中国人)と、アメリカ育ちの中国系との違いを強烈にアピール。一方、アメリカ育ちのヒロインも負けずに主張していました。

ファッションに置き換えてみると、「オリジナリティー」や「一点物」「ハンドメイド(リメイク)」なども、切り口は異なりますが、プラウド消費といえそうです。2018-19年秋冬シーズンに民俗や歴史に根差したフォークロアやウエスタンなどのテーマが勢いづいたのも、同じようなうねりと感じられます。

 

映画『クレイジー・リッチ!』がアメリカで大ヒット オール東洋系が受けた理由

映画『クレイジー・リッチ!』がアメリカで大ヒット オール東洋系が受けた理由

過剰なまでにラグジュアリーなファッションも映画の大きな見どころになっています。ヴァレンティノ、ジョルジオ アルマーニ、ディオール、エリー サーブ、キャロリーナ ヘレラ、マルケッサ、ラルフローレン、ステラ マッカートニー、アレキサンダー・マックイーン、ショパール、ブルガリ、スワロフスキーなどが登場。衣装を担当したメアリー・フォークト氏は「新旧の富はふたつの別世界。シンガポール、中国、マレーを加えて、さらにインドとイギリスのテイストを足すと、リッチでエキゾチックな無国籍のスタイルが完成します」と述べています。

伝統的な華僑のライフスタイルを押し出しながらも、シンプルなロマンチックコメディの軸を貫き、テンポのよいストーリー運びに徹している点も好感が持てます。様々な映画をオマージュしているシーンも楽しい。たとえば、『SEX and the CITY』の主人公キャリーがドレスを選ぶシーンとか。個人的にはラッパーでもあるオークワフィナの演じるキャラクターが個性的で引きつけられました。豪邸でのパーティー、クレイジーな遊びっぷりなどに見とれているうちにエンディングまで引き込まれていきます。随所に笑いがあるおかげで、堅苦しくなく楽しめます。

クレイジー・リッチ!
https://warnerbros.co.jp/movies/detail.php?title_id=54615
9月28日(金) 新宿ピカデリー他 ロードショー
©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT
配給:ワーナー・ブラザース映画

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