Front Row アナ・ウィンター ファッション界に君臨する女王の記録

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ファッション誌「VOGUE」米国版のカリスマ編集長、ご存じアナ・ウィンター。その仕事ぶりを追ったドキュメンタリー映画「ファッションが教えてくれること」も2009年に公開されて、話題となりました。ファッションメディアのクイーンとも呼ぶべきアナの初の伝記がこの『Front Row アナ・ウィンター』(マーブルトロン)です。

344ページと分厚く、読み応えはたっぷり。今までほとんどと言っていいほど公開されなかった、「ヴォーグ」編集長就任以前が詳しく語られています。アナの少女時代から書き起こして、「ヴォーグ」2004年9月号の刊行までをつづっています。この号はファッション誌としては出版史上最大のボリュームとなった全832ページを記録しました。「ヴォーグ」は9月号が特別に分厚くなることで知られ、映画「ファッションが教えてくれること」も9月号の準備を追った内容でした。

少女の頃からファッションが大好きだったアナ。1960年代には「スウィンギン・ロンドン」を体験し、ツィギーに魅了され、ファッションへの興味を募らせていきました。アイコンのボブヘアはその頃から、ミニスカートが映える細い身体もキープ。

ファッション業界に憧れを抱きつつ、青春時代を送りました。アンディ・ウォーホルに象徴される、ニューヨークの先端人が集ったディスコ「スタジオ54」に繰り出して、15歳頃から大人並のナイトライフを楽しみ、業界関係者たちとの親交を深めていきました。その頃からアナの目標は「ヴォーグ」編集部に入ること、しかも夢は米国版編集長になることでした。

スウィンギン・ロンドン時代の伝説的ブランド「BIBA(ビバ)」の顧客でもあったアナは「BIBA」のショップアルバイトに。これが初めてのファッション界での仕事でした。

「ハーパーズ・バザー」誌でのファッションエディターの仕事をつかみ、念願のモード誌の世界へ。その後は、「Viva(ヴィヴァ)」誌、「Savvy(サヴィー)」誌へ移ったアナは雑誌業界で浮き沈みを重ねながらも、着実にキャリアを重ねていく。

アナの編集者人生で転機となったのが、人気週刊誌「ニューヨーク」のファッションエディターに迎えられたこと。雑誌業界に入って約10年目でつかんだ輝かしいキャリア。アナは後にシニアエディターにまで昇進しています。

そして、ついにチャンスが訪れます。34歳の誕生日を迎える前から米国版「ヴォーグ」で働き始めるようになったアナ。その後、英国版「ヴォーグ」の編集長に抜擢されたのをきっかけに、いったんニューヨークを離れました。ついに88年、アナは「ヴォーグ」米国版の編集長の座に上り詰めたのです。

本を読んでいくと、今の輝かしい評価の陰には、地道にコツコツと編集者キャリアを築き上げてきたプロセスがあることがよく分かります。実際にアナが主要メディアから注目を浴びるようになったのは、「ヴォーグ」米国版編集長に就任してから。何事も最初から思い通りになるはずがなく、成功者のほとんどがひとつのことを着実に続けてきた末に成功を勝ち取ったという事があらためて理解できます。

そして、夢を見据えつつも、目先の仕事を着実にこなし、ステップアップしていくことによって、本来の夢に近づいていく軌跡にも共感を覚えます。さらに、女性であるという事実も仕事に生かして、しなやかにしたたかに生きているところも、同じ女性として頼もしく感じられました。出版ビジネスに限らず、様々な仕事に就いている女性にとって、キャリアと人生両方のお手本にしたい人肌のサクセスストーリーです。

Front Row アナ・ウィンター ファッション界に君臨する女王の記録

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働くことの厳しさと快感を!「ファッションが教えてくれること」
http://allabout.co.jp/fashion/nyfashion/closeup/CU20090923A/

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http://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20091106/104733/

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