テクノロジーを取り入れ、新たな服づくりに取り組むアプローチで知られる森永邦彦デザイナーの手がけるファッションブランド「ANREALAGE(アンリアレイジ)」の展覧会が開催されています。この展覧会に合わせて、写真家・奥山由之氏が撮った写真と、森永氏のメッセージが入った書籍『A LIGHT UN LIGHT』(アンリアレイジ著、PARCO出版)が2017年11月30日に出版されます。価格は2000円(税別)、写真主体の本にしては小ぶりのB6判で、ハンディな164ページ。バッグに入れて持ち歩きやすいサイズです。
光と影の表情を巧みに表現する「アンリアレイジ」の魅力をモノクロームの写真と、シンボリックな言葉で照らし出しています。写真のページと、森永氏の語録のページがほぼ交互に現れ、まるで写真と言葉が対話しているかのように「アンリアレイジ」の世界を紡ぎ上げています。
展覧会「A LIGHT UN LIGHT(ア・ライト・アン・ライト)」は池袋パルコのパルコミュージアムで11月26日まで開催されています。同展はパリ・コレクションに進出した15年春夏シーズン以降に焦点を当てました。同書はパルコミュージアムで展覧会期間中、先行販売されています。
光を浴びて柄が浮かび上がる服、紫外線の働きで色が変わる服。森永氏のクリエーションでは光と影のコラボレーションがドラマティックな効果を発揮します。
ランウェイで見る服も素敵ですが、カメラが切り取ったルックにはまたひと味違う陰影が刻まれています。バックステージのショットも収められていて、「パリ進出後」の軌跡の記録にもなっています。
森永氏の印象的な言葉がそれぞれのクリエーションと交差して、作り手の意識を浮かび上がらせます。
言葉がつよい。気負っているわけでも、飾っているわけでもないのに、芯があって、筋が通っている。この本から語りかけてくる言葉は、着る人との間に絆を結び、共感を呼び覚まします。
――非日常的な洋服ですが、ショーではなく生活やクローゼットの中で闘っていてほしい。
――洋服は日常を変える装置。
――現在のファッションにおける正解ではなく、「アンリアレイジ」における正解を追求する。
劇的な見え具合の効果もあってか、光と影のアイデアに関心が集まりすぎるきらいがありますが、森永流の服づくりは丁寧で正直。その象徴とも言えるのが、丹念なパッチワークです。軸をぶれさせないクリエーションは、自身の言葉に支えられています。今回の著書には、自らの出発点を確かめつつ、さらに先の「正解」へ突き進もうとする創り手の気持ちが託されているように見えました。
『A LIGHT UN LIGHT』(著者:アンリアレイジ / 写真:奥山由之)
https://www.amazon.co.jp/LIGHT-ANREALAGE/dp/4865062491
ANREALAGE「A LIGHT UN LIGHT」
http://www.anrealage.com/news/detail/100004/131