ドキュメンタリー映画『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』 多様性の感覚を先取り 「“違う”ことは、美しい」

ドキュメンタリー映画『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』 

ドキュメンタリー映画『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』 

ドキュメンタリー映画『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』 

ジャンポール・ゴルチエ氏のドキュメンタリー映画『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』が2023年9月29日(金)から、日本で公開されます。プレタポルテとオートクチュールの両方で一時代を築いたファッションデザイナーの創造と人生を掘り下げた多面的な映画です。

デザイナーの伝記的なドキュメンタリー映画はかなり多く、大半は時系列で生涯を振り返る構成です。特定の時期に絞った作品もあります。しかし、『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』は、彼の自伝的ミュージカルの舞台裏に迫るという仕掛けです。ミュージカルを演出するゴルチエ氏を通して、その人物像やキャリアを解き明かしていくという「二重構造」になっています。

自伝的ミュージカルの題名は『ファッション・フリーク・ショー』。2018年秋にパリで初めて上演されました。その後、世界各地で上演され、日本でも23年5月に幕を開け、話題を集めました。ミュージカルの演出と衣装デザインを、ゴルチエ氏が自ら手掛けています。

ゴルチエ氏が生み出したオリジナル名作が使われており、それぞれの時代に発表した斬新な装いを思い起こさせるような衣装が登場。天才ファッションデザイナーとしての実力をあらためて証明しています。

ミュージカルの制作は一筋縄ではいかないものだったようで、想定外のトラブルに相次いで見舞われた様子が映像に収められています。服に完璧さを求めるデザイナーは衣装合わせでやきもき。ランウェイショーとは流儀の異なる舞台リハーサルでもいらいら。勝手の違うミュージカル演出に頭を悩まされます。

 

ドキュメンタリー映画『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』 

ドキュメンタリー映画『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』 

ドキュメンタリー映画『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』 

物語の構成はデザイナーの歴史を振り返るクロニクル(年代記)のよう。幼い頃からファッションに憧れた様子や祖母をはじめとする家族との間柄など、知られざるゴルチエ像が次々と解き明かされていきます。彼の実体験は華やかで楽しいものばかりではありません。最愛の人との出会いと別れも明かされます。

実はゴルチエ氏を世に出したのは日本のアパレル企業。「アンファン・テリブル(恐るべき子ども)」と呼ばれた当時の勢いや、オートクチュールへの進出、成熟を重ねたクリエーションなどを含め、様々なヒストリーが紡がれていきます。

ゴルチエ氏とゆかりの深いビッグネームやセレブリティーが登場するのもこの映画の見どころです。コンサートツアー用に用意したマドンナの「コーンブラ」はゴルチエ氏の代名詞的な作品となりました。長年の交遊が続くマドンナのほかにも、フランスを代表する大女優のカトリーヌ・ドヌーヴやマリオン・コティヤールなどがゴルチエ氏の華やかな人脈を印象づけます。

ファッション業界で「異端児」であり続けたゴルチエ氏のクリエーションはダイバーシティー(多様性)が重視されるずっと前から多様性の感覚を先取りしていました。時にはちゃめちゃにもアナーキーにも映る作風は「型にはまらない」ことの大切さを歌い上げているかのようです。

ファッションが持つ、着る人の気持ちを高揚させ、プラウドな意識を引き出す。そして、周りまでポジティブに盛り上げてくれるのも、この映画のよさ。71歳を迎えたゴルチエ氏の元気にも驚かされます。ミュージカル用に200着もの衣装をデザインしたというゴルチエ氏の創造力も衰え知らず。「“違う”ことは、美しい」とゴルチェ氏の言葉のように、ドキュメンタリーを通していろいろな意味でパワーをもらえ前向きになれるストーリーです。

 

ドキュメンタリー映画『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』 
映画『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』
9月29日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋、シネマカリテほか全国順次公開
配給:キノフィルムズ
© CANAL+ / CAPA 2018

https://gaultier-movie.jp/

ドキュメンタリー映画『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』 

Go to top