第4回「ロエベ ファンデーション クラフトプライズ」2021の大賞、特別賞の受賞者が2021年5月25日、発表されました。
今回、大賞に選ばれたのは、Fanglu Linリン・ファングル(1989年中国生まれ)の《SHE》(2016年)です。同作品はそのとてつもないスケール感と、息をのむほど素晴らしい技術で審査委員を驚かせました。布で作られた同作品は、中国雲南省に住むペー族の女性が千年前から用いている裁縫方法に影響を受けています。
特別賞の受賞作品は以下の2点です。David Corvalanダビド・コルバラン(1979年チリ生まれ)の《DeserticoII》(2019年)。銅線と樹脂を使ったこの美しい作品には先祖や政治的なメッセージが込められており、遠い時代のアーティファクトの様な魅力を持っています。アタカマ砂漠にあるコルバランの家にインスパイアされた地形学的彫刻シリーズの一部であるこの作品は、商業の欲望がどのように鉱業を後押しするのかに注意を向けています。この作品の石化した木の様な表面は儚い輝きを持っています。それは私たちの周りにある美しいものの壊れやすさを表現しながら、人類の行動がどのように素晴らしい自然を危機にさらすのかを証言しています。
崎山隆之(1958年日本生まれ)の《聴涛》(2019年)。素材の熟知と卓越した技術によって生まれた心奪われるようなこの彫刻的な器は、常に移り変わる海の力に対する渦巻くラブレターです。崎山は、自身が観察した海の引き潮や流れをこの丸みのある形状に凝縮しながら、独特の砂釉を使うことで、海底を想起させるだけでなく、海底をひっくり返したような表情を生み出しています。
今回の受賞者は、30名のファイナリストの中から選出されました。これらのファイナリストは2020年に100か国2,500点を超える応募作品の中から選ばれており、2016年にジョナサン・アンダーソン氏が同プライズを考案して以来最も国際的なものとなりました。
当初、本年のファイナリストの作品は2020年に装飾芸術美術館にて展示される予定でしたが、現在フランスで施行されている各種規制により、これらの作品はwww.loewecraftprize.comにてデジタル形式で展示されています。
デジタル形式の新たな取り組みとなるロエベ ファンデーション「The Room」では、クラフトプライズが発足した2016年からこれまでの115名の全ファイナリストの作品を展示します。また、作品の展示だけでなく、各アーティストの所属するギャラリーとの相互リンクが張られており、世界上のクラフトファンが、アーティストとつながる手助けもしています。デジタル技術を駆使したデジタル展示会では、史上初となる3Dで映し出される装飾芸術美術館の大広間での展示会を“歩き回る”ことができます。