イタリアの画家ジョルジョ・デ・キリコの作品を集めた「デ・キリコ展」が2024年4月27日（土）から、東京・上野の東京都美術館で開催されます。期間は2024年8月29日（木）までです。前日のプレスプレビューに行ってきました。
不思議で不安で不条理な画風で知られるデ・キリコ。「形而上絵画」と呼ばれる、奇想の表現にはファッションデザイナーが着想を得ることもしばしば。様々なアート分野に影響を及ぼしてきました。
シュルレアリスムの代表的なアーティストのサルバドール・ダリやルネ・マグリットを呼び込んだといわれる、先駆的な存在ですが、ミステリアスで知性的なムードはデ・キリコならでは。ポジションや表現が特異な「束ねられない表現者」です。今回は初期から晩年にわたる長いキャリアを見渡せるような形で、世界各地から集められた100点以上の作品が集められています。
一般的なイメージに近い「デ・キリコらしい作品」をしっかり展覧会の柱に据えつつ、作風の変化を感じ取れるよう、初期の写実的作品や、後のバロック的な作品もカバー。展示全体にデ・キリコの魂の変遷を示すような厚みが備わっています。
脂が乗った時期の作品には騎士やマネキン、広場など、デ・キリコのアイコンと呼べそうな絵柄が盛り込まれています。そのままスカーフやドレスに写し取りたくなるほど、おしゃれの面でも興味深く映りました。
個人的にはギリシャ神話からの画題は「VERSACE（ヴェルサーチェ）」のアイコンにも通じる雰囲気を感じました。壁のくり抜きスペース越しに見る、作品のシチュエーションを疑似体験できる趣向も気に入りました。
絵柄はくっきり描かれているのに、趣旨やメッセージは謎めいていて、作品との対話に誘われます。絵を見ているうちに、自然と自分の内面からただならぬ意識や気持ちが呼び覚まされていくプロセスは心理学実験のよう。デ・キリコワールドに引き込まれていきます。
彫刻や舞台衣装など、絵画にとどまらなかった表現の幅広さを伝えているのも、今回の展覧会のよさ。豊富で丁寧な解説テキストが理解を助けます。2分間の動画説明では長い経歴をわかりやすく解説。充実した図録は出色の出来映えで「デ・キリコ世界の副読本」です。
この規模のデ・キリコ回顧展は10年ぶりだそうで、貴重な機会は見逃せません。2024年9月14日（土）からは神戸市立博物館に巡回しますが、まずは上野でじっくり鑑賞しておくのがおすすめです。
連動の関連グッズが企画されるのは、大型美術展の常ですが、本展はデザインのレベルが高く、グッズ選びが楽しめそう。たとえば、ポストカードはミニ額装に使えるぴったりサイズのマットが一緒に販売されています。額縁入りのポストカードが壁にずらりと並んでいて、ミニ美術館のようでした。
今年中盤のアート展で目玉的位置付けとなる「デ・キリコ展」。「本物は記憶に残る」をあらためて実感できる、満足度の高い展覧会でした。
・展覧会概要
「デ・キリコ展」
期間 2024年4月27日（土）～8月29日（木）
会場 東京都美術館
住所 東京都台東区上野公園8-36
開室時間 9:30～17:30（金曜だけは20:00まで）
※入室はどの日も閉室30分前まで
休室日 月曜日、5月7日（火）、7月9日（火）～16日（火）
※ただし、4月29日（月・祝）、5月6日（月・休）、7月8日（月）、8月12日（月・休）は開室
観覧料（当日） 一般2200円、大学生・専門学校生 1300円、65歳以上 1500円、高校生以下は無料
※土・日曜、祝日、8月20日（火）以降は日時指定予約制
巡回展
・神戸会場
期間 2024年9月14日（土）～12月8日（日）
会場 神戸市立博物館(兵庫県神戸市)
デ・キリコ展
https://dechirico.exhibit.jp/
