中村三加子氏が初の著書を出版 『美しい服 MIKAKO NAKAMURA 長く愛される価値ある本物』

中村三加子氏が初の著書を出版 『美しい服 MIKAKO NAKAMURA 長く愛される価値ある本物』

 

「MIKAKO NAKAMURA(ミカコ ナカムラ)」ブランドのデザイナーである中村三加子氏の初の著書『美しい服 MIKAKO NAKAMURA 長く愛される価値ある本物』(小学館刊)が出版されました。本のたたずまいそのものが素敵で、中村氏のポリシーを体現するかのような一冊です。

「捨てる服はもういらない」という言葉に象徴される、愛着を持って、長く着続けられる服を提案しています。サステナビリティーやSDGsという言葉が広まる前からの取り組みです。

素材もデザインも使い捨てにしないスタンスが自然と支持を集め、本物を求めるファンの裾野を広げてきました。そうした時代の先を見越した服づくりの秘密を、初めて語り明かしています。

祖父は山岳画家の中村清太郎、父は着物の図案家という芸術一家に育ちました。テキスタイルデザイナーからアパレルデザイナーとなり、国内外の数多くのブランドのデザインを手がけたのちに独立。文化的な環境で育った生い立ちはデザインのテイストにも表れているようです。

シンプルな服ほど、パターンや素材が大事になります。「MIKAKO NAKAMURA」の服は基本のシルエットがきれいで、奇をてらわないから、着ていく場面を選びません。丁寧な作り込みに注ぐ情熱も本書につづられています。

あくまでも着る人本人が主役であり、服は本人に寄り添う存在だという立ち位置がはっきりしているのも「MIKAKO NAKAMURA」の特質と言えるでしょう。「着こなし」という言葉は「着る人が工夫してうまく使いこなす」といったニュアンスを帯びています。でも、「MIKAKO NAKAMURA」の服は着るだけで済むから、着る人を選ばないのです。

ファッションは不思議なもので、学校で着方や選び方を教わらず、大半の人が「自己流」です。しかし、本当は美しいとか、似合う、きれいなどのイメージをつかんだうえで服を選ぶほうが自分好みの装いにつながるはず。本書では第1章の<「本当に美しいもの」とはなんでしょう。すべてはそこから始まります>を手始めに、服と向き合ううえで知っておきたい様々な事柄が丁寧に手ほどきされています。

ファッションにとどまらず、日々の過ごし方に関しても「気づき」の多い本です。忙しさにかまけて、つい後回しにしてしまいがちな心配りを思い出させてくれるようなところがあり、時折、読み返すことによって、凜とした気持ちを取り戻せそうです。

文字を読むだけではなく、本自体のありようからも教わることがいっぱいあります。たとえば、余白。ページをめくる所作まで整えてもらえるような造りで、本を読む大切さを再発見できる、妙なる製本です。服のデザインで余白を重んじる中村氏の意識がうかがえます。

タイムレスで本質的なことを学ぶところが多いという点では白洲正子や向田邦子に通じる雰囲気があります。ファッションでは「迷子」になる人が少なくないといわれますが、本書はやさしい案内役に手を引いてもらえるような頼りがいと納得感をもたらしてくれるでしょう。

 

『美しい服 MIKAKO NAKAMURA 長く愛される価値ある本物』
https://www.shogakukan.co.jp/books/09311575

MIKAKO NAKAMURA
https://mikakonakamura.com/

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