政近準子さんが著書『装力』を出版 頼れる「装いの羅針盤」

book

 

日本におけるパーソナルスタイリストの第一人者、政近準子(まさちか・じゅんこ)さんの著書『装力』(時事通信出版局)が出版されました。政治家や企業経営者など、多くの視線を集める人々のスタイリングを手掛けてきた政近さん。著書は10冊を超え、今回の『装力』は、その集大成とも呼べる内容です。「装う力」の大切さを改めて教えてくれる本でした。

日本では、大人になってから「おしゃれ」を学ぶ機会がほとんどありません。学校や大学で教えてもらえない、大人の「必修科目」がファッションです。食事のマナーは家庭でのしつけで習いますが、一方で服の着こなしについては、ある程度の年齢になると保護者も着こなしに口を出さなくなる傾向があります。でも、本当は大人になってから。社会に出れば、服装で能力や人柄まで判断されることも少なくありません。服を含めた第一印象は、それほど大きな力を持っています。

何をどう着るかは、本来、本人が自由に選べるものです。制服のような決まりがない限り、おしゃれには多様な選択肢があります。ただ、多くの人は手探りのまま、我流で着こなしているのではないでしょうか。「なぜその服を着るのか」「どんな自分を表現したいのか」を理解したうえで、場面にふさわしいアイテムを組み合わせるのは、意外と難しいことです。「好きな服」と「似合う服」「自分らしい装い」「その場にふさわしい服」は、必ずしも一致するわけではないからです。

特に仕事の場では装いが第一印象や信頼感に大きく影響します。ビジネスシーンでのアドバイス経験が豊富で、エグゼクティブ層をはじめ、幅広い層から信頼を得ている政近さんならではの視点が随所に盛り込まれており、本書は、頼もしい水先案内人のような存在と映ります。とりわけ、性別を問わず読める内容になっている点も、今の時代らしい魅力と言えるでしょう。

この本が類書と異なるのは、単に「人からどう見られるか」だけを語っているわけではないところです。装いは着ている本人のモチベーションを押し上げたり、自分をプロデュースしたりといった効果を発揮します。着こなしが何だか決まらない日に、居心地の悪い気持ちになった経験は誰しもあるでしょう。

その逆に、自分らしい装いに納得できている日は何だか心が弾むものです。装いが自己肯定感を引き出し、自然な自信もまとえそう。そういった「服の力」は小さくありません。自分らしく振る舞う上でも、装いへの満足感やセルフイメージとの折り合いは欠かせません。要するに、装い次第でハッピーでポジティブな気分を、自ら引き出せるわけです。

日本のファッションは国際的に見ても特有の自由さがあります。日本ほど多種多様な服を扱うショップがそろっている国はありません。ただ、その自由度がかえって災いして、スタンダードが分かりにくくなっているところがあるのかもしれません。だからこそ、本書のように装いの「軸」を示してくれる存在は貴重に映ります。本の中には「ギフトファッション」や「装うことは生きること」といった印象的な言葉もあります。装いは単なる見た目ではなく、相手への敬意や、自分自身を大切にする行為でもある――。そんなメッセージが心に残りました。

政近さんの提案は、正解を押し付けるものではなく、本人が自分で考え、自分らしい装いを選び取れるように道筋を示してくれます。哲学を提示したうえで、自分好みの装いをイメージしやすいマインドセットがあり、さらに多くの人が探し求めていた服選びのヒントがこの本の中に詰まっています。年齢や性別を問わず、さまざまな人の装いに寄り添い、後押ししてくれる本書を、多くの方に読んでもらいたいと感じました。

 

『装力』

 

政近準子 Facebook

政近準子 note

Go to top