トラディショナルブランドの「NEWYORKER(ニューヨーカー)」がブランド設立55周年を迎えました。目先の流行に惑わされないトラッドは、大人の装いの本道。このところストリート系のファッションがやや落ち着きを見せ、よりきちんとした装い、きれいめの着こなしが世界的に受け入れられる流れにあります。
正統派で端正な装いのシンボル的な英国調紳士服は近年、ウィメンズルックのお手本にもなっています。クラシカルなテイストは2020年以降も支持を広げていきそうです。
丁寧に仕立ててくれるオーダーメードは、ジャストフィット服との理想的な出会いの形。ウィメンズではまだ珍しいパターンオーダーを、ニューヨーカーがこの冬、ステンカラーコートを対象に、期間限定で受け付けていると聞きつけ、銀座店で体験してきました。
もともとメンズでは長い歴史のあるパターンオーダーは、基本のシルエットをベースに、自分好みのカスタマイズを加えられる仕組みです。ニューヨーカーではジャケットやドレス、スカート、パンツなどのパターンオーダーが用意されています。「Pattern Order For Women」のページでは、注文から完成までの流れを、動画も交えて、分かりやすく説明しています。
しかも、今回のコートは期間限定とあって、特別感が高くなっています。「MY DEAREST COAT」と名付けられた通り、自分にとって最も愛着の持てる1着をオーダーできる機会となっています。
色や生地などには、いろいろな選択肢が用意されていますが、基本のシルエットは、定番タイプの細身ですっきりした形です。冬のコートはほとんど毎日のように着るアイテムだけに、癖がありすぎない、オーソドックスな形がおすすめです。それでいながら、モダンなアレンジも随所に施されています。
たとえば、着丈は長すぎないレングスに設定。ミニボトムスで合わせて、コートの前を留めればドレスライクに着こなせます。人気のワイドパンツやロングスカートと合わせたときも、バランスがきれいに決まります。
さらに、ウエストのシェイプも程よく工夫されていて、フラップポケットを高めに配し、裾に向かって控えめに広がるAラインが上品。スタイルアップ見えするデザインです。いろいろなシーンで使いやすい、現代女性が求める、頼もしい一着と言えそうです。
銀座店に着くと、ショップスタッフの吉野奈津衣さんが出迎えてくれました。最初の段階から、吉野さんがオーダーの手順を穏やかな口調で説明してくれます。
<ステップ1> 色選び
まずはコートの色を選びます。ブラック、グレー、キャメルという3色から、好きな色を選べます。しかし、私はここで結構、悩みました。写真を見ていただければ分かる通り、どれも素敵な色なのです。
最終的には黒に決定。「黒の本格派」というのは、私がこれまで持っていなかったタイプだったことも、決断の理由になりました。せっかくのオーダーですから、ワードローブにないコートを選ぶというのは、意味のある選び方だと思います。シンプルめのシルエットが生きるという点でも、黒を選びました。
<ステップ2>生地選び
色が決まったら、次は生地です。用意された9種類から選びます。
9種類をじっくり比較した末に、私がチョイスしたのは、NEWYORKERオリジナルウールシルクビーバーです。ビーバーという名前がついていますが、あの動物、ビーバーのものではありません。ビーバーというのは、コート向けのウール生地に施す仕上げの名前です。織り上げたウールを縮ませた後、毛をきれいに整えた、保温性の高いウール生地のことです。
今回、使われている生地は、シルクを混紡しているので、光沢感が豊かで、軽くて滑らか。実際に手触りを確かめて選べるのは、パターンオーダーならではのよさです。
<ステップ3>裏地選び
まだまだ選ぶ楽しみが続きます。次は裏地。32種類も候補があるから、お気に入りの裏地と出会えるはず。色だけではなく、織り地の柄も選べます。
私が気に入ったのは、グラフィカルな織り模様入りの赤。コートの地色が黒なので、裾がひるがえった際に、チラリとのぞかせる感じで、印象的なレッドを迎えたいと考えました。
光沢のある赤は絶好の「差し色」にもなってくれそう。室内でコートを脱いだときも印象的で様になります。このように着こなしや見せ方を思い浮かべて、スタッフと相談しながら決めていけるのが、パターンオーダーの魅力です。
<ステップ4>ボタン選び
素材選びの最後は、コートの正面に並ぶボタンです。正面にあしらわれるだけに当然、目を惹きやすいパーツです。コートの印象を決める効果もあるので、慎重に選びたいものです。
3色から選べます。コートの地色になじませるか、あえてずらすかが、考えどころになります。小さいパーツですが、妥協は禁物。私は生地に合わせて、黒ボタンを選びました。
<ステップ5>袖丈、着丈、ウエスト幅
コートの袖丈、着丈はプラス・マイナスそれぞれ5センチまで、詰めたり出したりできます。同じくウエストもプラス・マイナス3センチまで調節が利きます。
サンプルのコートを着て、体型や好みに沿って、調節の加減を決めていきます。たまたま私はサンプルサイズがあつらえたようにぴったりで、サイズ直しは不要でした。でも、これは割と珍しい出来事だそうで、通常は念入りに着心地や見え具合を整えていくということでした。
ただ、ジャストサイズに仕上げるだけではなく、自分の好み次第で、着丈を長くするようなアレンジも受け付けてもらえます。いろいろなバリエーションを示してくださった吉野さんからのアドバイスを受け、検討を重ねた末に、袖丈も着丈もベースのままと決定。これまで持っていなかった、すっきりシルエットときちんと感を兼ね備えたコートをと考えた結果です。絶妙な丈感と、シェイプされたシルエットに納得して、生地やパーツ選びを終えました。
最終のステップ5までで、要した時間は約1時間でした。親身な態度で相談に乗ってもらいながら、じっくり選べるので、そのプロセスそのものがスペシャルなひとときに。上質なおもてなしを受けた気持ちで過ごせました。注文から完成までには4週間ほどがかかるそうです。出来上がりが今から楽しみです。吉野さん、ありがとうございました。
「MY DEAREST COAT」はニューヨーカーで以前から人気の高い、ベーシック寄りのラインです。しかし、昔と同じデザインではありません。シーズンを重ねるごとに、工夫や改良を重ね、シルエットや着丈の絶妙なバランスが徐々に整い、今に至っているそうです。
パターンオーダーを進めながら、生地の違いやシルエットの意味なども教えてもらえたので、出来上がりの品に袖を通す前から、愛着がわいています。私が仕立てるわけではなく、実際には選んだり試着したりしただけですが、オーダーという関わり方のおかげで、コートの「オーナー」という自覚が生まれたのは、ちょっとした驚きでした。
届いたコートを羽織るたびに、オーダーしたときの経験が思い出されるはずで、相棒コートに自然な親しみがわきそう。誕生に立ち会ったオーナーとして、凛とした着姿で、大事に着てあげたいと思えるのも、パターンオーダーのよさだと感じました。
ニューヨーカー銀座フラッグシップショップ
東京都中央区銀座1-5-13 ゼットエックス銀座ビル1F・2F
「MY DEAREST COAT」オーダーフェア
http://www.newyorker.co.jp/news/2019/10/4819/
NEWYORKER
http://www.newyorker.co.jp/