2015-16年秋冬・NYファッションウイークが終了し、
無事に帰国しました~!マイナス気温が毎日続き、極寒でした!
気温が零度だと、「今日は暖かい」って思ったほどでした(笑)。
今回のNYコレクションを振り返ると、「パワードレッシング」と着心地重視の「コンフォート」、リラクシングやこなれ感重視の「ネオエフォートレス」、自由な風情の「ボヘミアン」などがミックスされた、大人女性の遊び着のイメージが強まりました。このところ、ガーリーやフェミニンで若々しい雰囲気でしたが、もう少しアッパーで、大人の夜遊びを感じさせるムード。とはいえ、気張って出掛けるのではなく、余裕や落ち着きのある着こなしです。華やぎや高級感はあるけれど、肌に優しくて着心地がよく、力んでいない感じがキートーンになります。
内なるマニッシュを引き出す、自然体のジェンダーミックスも柱になりそうです。今までは、メンズ風アイテムを頑張って身につけていた感じがあったのですが、そうではなく、もっと普通にマニッシュアイテムをまとう感覚です。そもそも女性の中にある男性部分を無理なく表出する、「男だけど、何か?」とでも言いたげなさりげないムード。これまでよりもっとナチュラルなジェンダーミックスです。
着ている人がエフォートレスを求めるならば、創り手も「エフォートレス」です。今までは、頑張って自分を追い込み、極限のクリエーションを絞り出そうとして、気負っていたところがあったわけですが、今回感じられたのは、もっとリラックスして、ある意味、ビジネスライクに取り組む態度。タイミングと濃度を見計らって、消費者や市場が期待する「半歩先」のクリエーションを用意するといった感じです。芸術家・職人肌の情念クリエーションとは、冷静さやビジネス志向の面で違いがあります。
トレンド変化のめまぐるしさがやや鈍り、ロングトレンドが継続している今の時代、微妙なアレンジを加えながらクリエーションを小出しにしていくほうが消費とかみ合いやすいという判断が透けて見えます。NYブランドの作品を見てそう思いました。それは、まるで、新技術・新製品の「小出し」が常識である、米国のパソコン・デジタル業界のよう。長くビジネスを続けるために、全てのクリエーションを一気に出し切らないで、消費者の動向を先読みしながら、少し先の延長線上にある「次」を提案するといった感じです。
それは、「モードじゃなくてビジネスがしたい」というNYのデザイナーたちの気持ちの表れでもあるように感じました。実際にビジネス面で成功している諸ブランドをお手本に、マーケットと真剣に向き合う姿勢を示したとも見えます。「アーティスト<プロフェッショナル」という立ち位置の定め方は、ビジネス大国アメリカならでは。創り手側は新しい枠組みと態度でファッションと向き合い始めているような気がしました。
今回は決してものすごく目新しいモードの提案が相次いだわけではないけれど、ファッションを安定的な成長が見込めるビジネスとして新たなステージに押し上げる意欲がうかがえます。これまでのモード至上主義は創り手に過剰なプレッシャーを強いて、早い段階で燃え尽きさせてしまう危険性もはらんでいました。シーズンごとに様変わりするモードは消費者にも「次はまた全然違うトレンドが来るのか」「そんなにたくさん買っていられない」といった不安感を与え、購買意欲を鈍らせる結果にもつながっていました。
でも、数年先まで新製品の発売時期を予告するロードマップを示すことが当たり前になっているデジタル業界や、金融動向を前もって知らせるフォワードガイダンスのように、モードのゆるやかな「未来予想図」を提示しつつ、穏やかな変化をワードローブにもたらす姿勢は、創り手にも消費者にも受け入れやすいものでしょう。「ファッションの民主化」が進んで、着る側が自分好みのスタイリングを確立していく中、創り手側にも消費者の着こなしを尊重する意識が広がっています。強引に「全取っ替え」「爆買い」を求めるのではなく、着る側の気分や懐事情と折り合いをつけながら、マーケットと二人三脚で前に進もうとする態度は、モードの後退ではなく、むしろファッションビジネスの進化と映ります。その意味において、世界のビジネス首都、NYから発信された今回のコレクションは大きな成果を残したと言えそうです。
2015-16秋冬ファッショントレンドのキーワードを並べてみましょう。
◆テイスト
パワードレッシング、70年代、レトログラム、大人の夜遊び
ソフトボヘミアン、ボーホーシック、ロックロマンティック、ヘビメタ・リュクス
アンドロジナス、リッチ、ミリタリーグラマー、フォークロア
グラマラス、レディーライク、グリッター、コンフォート
アスレジャー、コンテンポラリーモッズ、アメリカンスポーツウエア
モダン・ワークウエア、ユーティリティー、マスキュリン×フェミニン
◆スタイリング
ロング&リーン(長く細い)、構築的、スリーブレス、
オーバーサイズ(ビッグシルエット)、アシンメトリー、ベアショルダー
◆アイテム
変形アウター、ロングコート、スリーブレスコート、ローブ風アウター、
コクーンアウター、ケープ、ポンチョ、マント、ガウン、ボマージャケット、
ファーアウター、ロングベスト、タートルネックセーター、プルオーバーニット、
パンツ、クロップトパンツ、キュロット、ベルボトムパンツ、ジャンプスーツ、
ストレートドレス、ロングドレス、ロングスカート、ロンググローブ
クロスボディーバッグ、ニーハイ・サイハイブーツ、ファーストール、
ファー小物、スカーフ、バンダナ風、フリンジバッグ
◆素材
レザー、スエード、カシミア、モヘア、フェザー、ラメ、ネオプレン、フェルト、
フランネル、ジャカード、ツイード、ジャージー、ベルベット、ケミカル生地
◆色
黒、ゴールド、メタリック、キャメル、グレー、ブラウン、ボルドー、レッド、
バーガンディー、オレンジ、オリーブ、グリーン、ネイビー、アイボリー、イエロー
◆モチーフ・ディテール
格子柄、ピンストライプ、フリンジ、ビーズ、バンデージ、パッチワーク、
テイラード、シャーリング、ファー襟、ニードルパンチ、不ぞろい裾、プリーツ
パンチング穴、ファーカフス、ジップ、ビッグドレープ、エンブロイダリー(刺繍)、
きらめきパーツ、帯風ベルト、ボウタイ、スタッズ、鳩目、
2015-16年秋冬NYコレクション・リポートも公開しましたので、
以下も合わせてご覧くださいませ☆
↓
◆2015-16年秋冬NYコレクションリポート(前編)~強くあでやかな「パワードレッシング」
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/beauty/fcolumn/CO005410/20150305-OYT8T50129.html
◆2015-16年秋冬NYコレクションリポート(後編)~着心地と大人らしさの両立
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/beauty/fcolumn/CO005410/20150313-OYT8T50048.html
◆マイナス気温が続く極寒の中、15-16秋冬・NYコレが開幕
http://apparelweb-collection.tumblr.com/post/110947822984/ny-1-15-16-ny
◆モードのギアチェンジ誘う新鮮な提案相次ぐ
http://apparelweb-collection.tumblr.com/post/111271469014/ny-2
◆深まるミックススタイリング、高まるグラマラス
http://apparelweb-collection.tumblr.com/post/111552393994/ny-3
◆-10度の極寒ファッションウィーク、でも演出はほっこり
http://www.fashionsnap.com/the-posts/2015-02-18/ny15aw-miyata01/
◆リッチでグラマラスな"パワードレッシング"に向かうNYモード
http://www.fashionsnap.com/the-posts/2015-02-24/ny15aw-miyata02/
~関連記事~
2014年ファッションの裏トレンドは「トレンドの消失」
http://www.fashionsnap.com/inside/column1412-miyata/
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◆宮田理江インスタグラム・instagram(Follow me♡)
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◆グラム【宮田理江の「ファッションeye」】更新中~[E:heart02]
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◆アパログ【宮田理江の「おしゃれhack」】更新中~[E:heart02]
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