「UNIQLO(ユニクロ)」の2020-21年秋冬コレクションが発表されました。「LifeWear」は丁寧な暮らしぶりになじむアイテムをそろえ、人々のライフスタイルに一段と寄り添うスタンスを示しています。「SUSTAINABLE CITIES(サステナブル・シティーズ)」を掲げ、環境への配慮も深化。素材やディテールのさらなるグレードアップにも取り組んでいます。
「THE OUTDOORS」「WORK & CRAFT」「ART & DESIGN」という3つのテーマを打ち出しました。シンプルさ、機能性、美しさという、兼ね備えるのが難しい3要素を、高い次元でバランスさせています。それぞれの内容をみていきましょう。
登山やキャンプなどに由来する、アウトドアの装いは近年のブームが続いています。でも、ユニクロが提案する「THE OUTDOORS」は、従来のアウトドアにとらわれない、もっと幅広い意味合いです。都市生活者のライフスタイルを応援する機能性、ストリートウエアの躍動感を盛り込んでいます。
第2のテーマ「WORK & CRAFT」では、資源を有効活用する取り組みを進めつつ、自然体の洗練を感じさせる装いが提案されています。有機野菜・果物の濃色やアップサイクルされたジーンズの端切れの色などをキーカラーに選びました。
素朴な質感のツイードジャケットや柔らかなシフォンブラウスには、70年代パリ左岸やプレッピースタイルからのインスピレーションが感じ取れます。ヴィンテージライクなハンティングコートも正統派テイストが際立つアイテムです。
ウィメンズのアウターでは、マスキュリンなツイードテーラードジャケットが新登場。トレンドのペールトーンのコートも用意されました。メンズではテーラードジャケットに加え、コーデュロイ素材のジャケット・セットアップ、ウォッシュジャージー素材のショート丈ジャケットが提案されています。
3番目の柱「ART & DESIGN」では、彫刻のようなフォルムや質感のある素材に注目しています。ウルトラライトダウンジャケットやモックネックセーターのシルエットは優美さを深くしています。ウールライク素材のCPOジャケットは、ブラウン系ナチュラルカラーが落ち着きをもたらしました。プリーツスカートはたおやかさと品格を兼ね備えています。
アウターアイテムは、ブロックテックコートやハイブリッドダウンジャケット、フリースジャケット、ウルトラライトダウンアイテムなどをラインアップ。着こなしの軸にレイヤードを据えて、気温や天候の変化に応じた、自在のスタイリングを可能にしています。
フリースはさらに進化を遂げました。リサイクルポリエステルを使用したフリースジャケットや、防風フィルムを用いたジャケットは、街歩きの心強いパートナーです。ドレッシーな着映えがかなうフェイクファーウエアも登場。毛足が短めで、気負わずにまとえます。
アンダーウエアや靴下でおなじみの「ヒートテック」はパンツやスカートにも用いられています。スマートスリムストレートパンツはほっそりしたシルエットを描きます。防風フィルムを加えたスカートは、ぬくもりと穿き心地を両立させた高機能タイプです。
センタープレスを利かせたパンツは、折り目がしっかりついています。折り目が消えにくくなるよう、裏側から加工を施してあるそうです。縦にも横にも伸びる2方向ストレッチがリラクシングな着心地を生んでいます。
◆Uniqlo U
アーティスティック・ディレクターのクリストフ・ルメール氏が手がける「Uniqlo U(ユニクロ ユー)」は、ニュートラルな色が増えました。ウィメンズではサテンやコーデュロイといった、風合いに表情を帯びた素材が用いられています。
ベージュやブラウンの落ち着いた色味を軸に据えて、微妙に色調をずらした「トーン・オン・トーン」のスタイリングに仕上げています。スウェットのセットアップ、メンズライクなボウタイブラウスなどが自在の着こなしを可能にします。
メンズのアウターには、コーデュロイのパデットブルゾンや防風機能付きのハーフコートがお目見え。コーデュロイ素材で仕立てたスタンドカラーシャツやパンツにも用意されました。フリースはジップジャケットやシャツにぬくもりを添えています。スウェットのセットアップは落ち着いた色のおかげで、シックに着られる雰囲気にまとまりました。
◆UNIQLO MATERPIECE
日本のものづくりの精神を受け継ぎ、細部にこだわった進化するUNIQLOの定番アイテム(色褪せない名品)を紹介する「UNIQLO MATERPIECE(ユニクロ マスターピース)」では、カラーバリエーションの多さで知られるソックスに、消臭機能が備わりました。洗濯しても効果が続くのはうれしいところ。糸そのものに消臭性能を組み込んでいるので、洗っても効果が落ちにくいそうです。
ルームシューズは爪先が上がっていて、歩きやすい設計。2層式のインソールが歩きやすさを支えています。家ごもりの時間が長くなり、こういったインハウス・アイテムにも、これまで以上のクオリティーを求めたくなる気持ちに、目配りが行き届いています。
細部のグレードアップは、今回のコレクションの際立った変化と言えるでしょう。チェスターコートは細い糸を使って、上質な光沢感と肌触りを引き出しています。新たに採用した、水牛調のマーブルボタン、細感を印象づける新シルエットもコート姿をシャープに見せています。
「持ち続け、着続ける楽しさ」も用意されています。たとえば、メンズの濃色ジーンズには綿100%のカイハラ社製セルビッジ生地を使用。会場では17年春夏モデルと新モデルを並べて展示。約3年余りの着用によって、デニムの風合いに、どのような変化が生じるのかを示しました。
一般に「ヒゲ」や「アタリ」と呼ばれる、経年変化に伴う色落ちが生まれる仕組みまで解説。ジーンズにはヒートテックの裏起毛素材を用いた「ヒートテックウルトラストレッチジーンズ」が新たに登場します。
いきなりの大雨が増えて、出番の多くなった折りたたみ傘にも、風を受け流す回転設計が取り入れられています。折れにくくなって、ますます重宝に。ユニクロの傘は既に秘かなヒット商品になっています。
◆SUSUTAINABILITY STATEMENT
サステナビリティに感心しては「服のチカラを、社会のチカラに。」というステートメントが打ち出されました。コロナ感染症への取り組みにも展示スペースが割かれました。早い段階から多面的な支援・貢献を重ねてきたことがよく分かります。
具体的な資源再利用のプロセスを紹介したコーナーでは、視覚的に再生の流れを理解できます。ダウンの回収・再利用にも道筋がつき、20-21年秋冬シーズンからはいよいよ新品のダウン商品が発売を迎えるようです。
◆UNIQLO / INES DE LA FRESSANGE
「UNIQLO / INES DE LA FRESSANGE(イネス・ド・ラ・フレサンジュ)」は1970年代の自由で自立した女性たちにオマージュを捧げるコレクションとなりました。70年代を象徴する女優ジェーン・バーキン、アリ・マッグロウ、ダイアン・キートンらにインスパイアされています。
シルクドレスや3Dニットが新登場し、シルク100%のブラウスやラップドレスもラインアップ。ツイストプリーツのスカートやワンピースはボヘミアンカルチャーのムードを醸し出します。
「HANA TAJIMA(ハナ・タジマ) FOR UNIQLO」はグローバル文化の多様性を一段と際立たせています。優美なフォルムと着心地のよさが持ち味。女性の身体にしなやかに寄り添う、ユニバーサルなデザインに磨きが掛かっています。
◆UNIQLO and JW ANDERSON
「UNIQLO and JW ANDERSON」コレクションは「英国の伝統と革新を。すべての人に」をテーマに選びました。ロンドンの洗練された都会のムードを写し込んでいます。ムートンライクなブルゾンやブリティッシュチェックのコートは英国らしいたたずまい。キーカラーのネイビーに加え、カーキやオレンジといったアーシーな色合いを軸に、パッチワークやアシンメトリーデザインを盛り込みました。大人とのリンクコーディネートが楽しめるキッズラインは前シーズンに引き続き、提案されています。
全体を通して感じたのは、趣旨や目的、効果がはっきり打ち出されていて、消費者が選びやすい提案になっていた点です。商品を購入することによって、どんなメリットを感じられるかを、ストレートに理解できるので、「買いやすい商品」に仕上がっています。言い方を変えれば、納得感を得やすいアイテムでもあります。
シーズンを重ねるごとに、クオリティーを高め続けるユニクロの新コレクションは、ファッションとの向き合い方が様変わりしつつある中、ファッション企業に求められるありようを示しているようにもみえました。
UNIQLO
https://www.uniqlo.com/jp/