UNIQLO(ユニクロ)「LifeWear」の2022-23年秋冬コレクションが発表されました。メッセージに掲げられたのは「Today’s Classics」。「クラシック」という言葉には「伝統的、古風、正統派」といったイメージがあります。でも、ユニクロはオーソドックスなウェアをサステナビリティーや機能性の面でアップデート。オーセンティックなたたずまいと、現代的な特質を並び立たせています。
アウターウェアは「Today’s Classics」を印象づけるアイテムです。夏のうちから着やすいシャツジャケットや、シックなウールコートなど、多彩なバリエーションのカジュアルアウターが用意されています。防寒性が高いダウンや中綿アウターも一段とラインナップが広がりました。
今回の展示ではアウターの充実ぶりが目を引きました。お得意のフリースはもちろん、ダウン、ボアなど、多彩な質感のアウターが勢ぞろい。ダウン以外の中綿で表現するパッファーやキルティングなどのデザインもバリエーションが広がっています。
フリースが100%リサイクル素材になったところには、SDGsやサステナビリティーへの意識がうかがえます。スモーキーパステルカラーも展開され、様々な装いに落とし込めるようなバリエーションです。
ニットウェアは一段と風合いがリッチに進化。カラーもニュアンスを帯びた色合いが増えました。カシミヤのセーターはカラバリが豊富。カラーブロックデザインも登場します。畝(うね)模様が印象的なケーブル編みセーターは主役を任せられそうな着映えです。カウチンセーター風のタイプも登場します。
これまでのお披露目ではテーマ別やシーン別などでの展示が多かったのですが、今回は素材別という構成が目立ちました。カシミアニットやフリースなどはいっそう洗練されたアイテムがそろっています。とりわけニットは上質感や色味を感じ取りやすくなっていました。薄手のタイプはレイヤードの着こなしの差し色としても重宝しそうです。
色はグリーン系を推しています。あざやかなグリーンだけでなく、秋冬ルックになじませやすいくすみトーンや渋めカラーも用意されています。ニットウェアやコーデュロイ、マフラーなどには、お出かけ気分とナチュラル感が漂っています。ジーンズはバギーシルエットが打ち出されています。名門メーカーのカイハラと共同で開発した極上デニムで仕立てられました。
シーズンの常識にとらわれない提案が相次いでいます。たとえば、ミニスカートやクロップド丈トップスなども秋冬向けにお目見え。年間を通して着回す「シーズンレス」のトレンドにも生かしやすいアイテムです。これらはエイジレストレンドにつながっているように思います。
ようやくお出掛けを楽しめような状況を背景に、スポーツユーティリティーウェアにも期待が高まってきました。パーカやスウェットなどの軽やかな装いにも、クールなひとひねりが加えられています。ヘルシーで洗練されたムードです。
今回の展示で興味を引いたコーナーが「Factory」。英語で「工場」という意味の言葉通り、ユニクロの生産を支えるしくみを紹介した展示です。ダウンを手作業でつくる工場の動画が公開されていて、製造プロセスの透明性にも配慮が行き届いていました。品質管理に関する、繊細な心配りに触れることのできる動画です。
■Uniqlo U
アーティスティックディレクターのクリストフ・ルメール氏とそのデザインチームが手掛ける「Uniqlo U」。気負わないのに品格や上質感が際立つ装いが新シーズンに向けても提案されました。ブラウンのロングアウターやグレーのビッグポケット付きジャケットが自然体のたたずまいです。
■UNIQLO / INES DE LA FRESSANGE
フレンチシックの代名詞として知られるイネス・ド・ラ・フレサンジュ氏と共にユニクロが創る「UNIQLO / INES DE LA FRESSANGE」。今回はネイビーやグレーを軸に、穏やかさと上品テイストが同居する装いを提案。「フランス風のエフォートレスなスタイルを世界に」というイネスの思いを映した、くつろぎと大人感を兼ね備えたアイテムがそろいました。
■HANA TAJIMA FOR UNIQLO
ニューヨークを拠点に活動するファッションデザイナーのハナ・タジマ氏がユニクロのLifeWearと共鳴して生み出す「HANA TAJIMA FOR UNIQLO」。縦落ち感がきれいなルックを提案しています。ワンピースを主体に気品を醸し出すルックが用意されました。以前はロング丈が主流でしたが、膝丈などのすっきりした着丈でよりスタイリッシュに。適度にドレッシーでありつつ、体を締め付けないしなやかなシルエットがやさしい着心地に導いてくれそうです。
■Uniqlo and Mame Kurogouchi
圧倒的な成功を収めているデザイナーの黒河内真衣子氏が手掛けるファッションブランド「Mame Kurogouchi」とのコラボレーション。下着と服の境界線を超えるインナーウェアコレクションが幅広い年齢層から支持を受けています。特に優れているのはデコルテ周りのカッティング。優美でありつつ、フェミニンな表情を、絶妙のカッティングが引き出しています。
今回は新鮮な色味が加わって、さらに趣の深い着映えに仕上がりました。カーキやグリーンといった、ランジェリーでは珍しかった色が登場し、モダンなイメージに。ヒートテック×シルクのミックスはひそかに待望されていたであろう異素材ミックスの新提案です。ビスチェタイプのボディーウォーマーやシアーメッシュのスリップドレスなどは、もはやインナーウェアとしてだけではなく、視線を受け止める服として着ていきたくなる、シーンフリーなアイテム。ほんのりとセンシュアル(官能的)なムードも特別感を帯びています。
■UNIQLO and JW ANDERSON
英国出身のデザイナー、ジョナサン・アンダーソン氏と組んだコレクションは、息の長いプロジェクトに育ちました。今回のコレクションでも英国テイストとアクティブ感がこなれた見え具合に導いています。ジェンダーレスでひねりある遊び心が備わっていて、格上カジュアルの装いに整えられそうです。
「美意識のある合理性」「シンプルで上質」「進化し続ける普段着」などを掲げる「LifeWear」はさらに歩みを進め、ベーシックの先にある、新たな「Classic」の領域を生み出しつつあるようです。SDGsやサステナビリティーへの目配りも一段と細やかになり、クラシカルとモダンを橋渡しするかのようなアプローチと映りました。