2024年度（第42回）毎日ファッション大賞の表彰式が2024年10月23日に開催されました。グローバルなファッションシーンの中で日本ファッションは着実にポジションを高めています。東京コレクションへの関心も一段と高まってきました。その大きなうねりを示す選考結果は、国内で最も権威のあるファッションアワードの重みを印象付けています。今回も選考委員の1人として表彰式に参加し、この賞の意義をあらためて感じました。受賞した皆さんが述べたメッセージからは受賞を名誉に思う気持ちが伝わってきます。おめでとうございました。
◆大賞 三原康裕氏 「Maison MIHARA YASUHIRO（メゾン ミハラヤスヒロ）」デザイナー
ブランドを立ち上げてからの13年間で最大の財産は「一緒に働いてくれるスタッフができたこと」だと述べ、仲間たちと受賞の喜びを分かち合いました。一緒にものづくりに励んでくれる工場や職人の方々に尊敬と感謝の念を述べたのも、自らを1人の「シューズデザイナー」と位置付ける三原氏らしいところです。
「僕は普通に9時半に会社に出勤して普通に当たり前のことをやってきただけ」と、日常的な仕事の積み重ねの価値を控えめに語りました。「三原人脈」とも呼べそうな、サポートを受けてチャンスをつかんだ後進の多さも三原氏の受賞に異論がなかった理由の1つ。「目の前に困っている若い子がいたり、困っている人がいたら助けたい気持ちになる。それだけ」と、ここでも控えめにコメントしました。
1996年に「MIHARAYASUHIRO」を立ち上げてから、もうじき30年を迎えます。「僕はやっぱりファッションが好きだし、その前にもアートが大好きでそれだけで、ここまでやってきた感じです。あっという間の30年でした」と振り返り、温かな拍手が送られました。
◆新人賞・資生堂奨励賞 村田晴信氏 「HARUNOBUMURATA（ハルノブムラタ）」デザイナー
新人賞・資生堂奨励賞を贈られた村田氏はブランドを立ち上げて5年の節目での受賞となりました。「ポケットを手に入れたときの仕草に代表される繊細な動き、所作にみられる日本人の美意識を持って立ち上げたブランド」と成り立ちを解説。「ラグジュアリーブランドとして確立したい」と目標を掲げました。
同時に、「すごくパーソナルなブランドでもある」と述べて、「祖母のおしゃれな姿や美意識を取り入れられたらいいなと思って立ち上げた」と、秘かなブランドイメージを公開。「この賞をきっかけに、もっとグローバルに広げていきたい」と夢を語り、今後の展望に期待を寄せました。
◆鯨岡阿美子賞 三宅正彦氏 日本ファッション・ウィーク推進機構（JFWO）前理事長
大手服飾メーカーのサンエー・インターナショナル（現在のTSIホールディングス）の社長や会長を務め、ファッション産業に携わってきた三宅氏は長年、JFWを支えてきた、縁の下の力持ち的な存在です。近ごろは世界4大コレクションに引けを取らない規模と表現力を兼ね備えるようになってきた東京コレクションを現在のレベルに押し上げた功労者でもあります。
デザイナーが花形的にスポットライトを浴びやすいファッションの世界で、しくみやビジネスを支える功労者をしっかりと評価するこの賞にふさわしい受賞者といえるでしょう。三宅氏はJFWをサポートする、楽天をはじめとする企業や関係者に感謝を述べて受賞の挨拶に代えました。
表彰式の後は「ハルノブムラタ」のランウェイショーが開催されました。スピーチでも述べていた、20歳の当時に作ったジャケットがファーストルックで登場。ショーの後は、受賞者と関係者を交えた歓談パーティが始まり、和やかな雰囲気に包まれました。今の日本のファッションシーンを盛り上げ、支える皆さんとの語らいの輪が広がり、人と人を引き合わせ、気持ちを弾ませるファッションの意義を再確認する機会となりました。
毎日ファッション大賞の公式サイトでは、受賞者のインタビューが掲載されています。思いやビジョンが詰まった言葉の数々からファッションに対する情熱が伝わってきます。また、選考経過が公開されていて、選考プロセスを知っていただけます。きちんと議論の透明性が確保されているのは、重みのあるアワードにふさわしいところです。さらに、選考委員全員の講評が公開されていて、私のコメントも載っています。それぞれのコメントは、今のファッションに向けられるまなざしを知る手がかりにもなるので、よろしければ下記をご覧ください。
「2024年（第42回）毎日ファッション大賞」表彰式 / 提供:毎日新聞社
・第42回毎日ファッション大賞受賞者ページ
https://macs.mainichi.co.jp/fashion/win42/index.html
毎日ファッション大賞
https://macs.mainichi.co.jp/fashion/
