ウクライナ発「LITKOVSKA(リトコフスカ)」デザイナー来日インタビュー エストネーション六本木ヒルズ店でチャリティーイベントを開催

ウクライナ発のブランド「LITKOVSKA(リトコフスカ)」、デザイナーにインタビュー

 

ウクライナ発のブランド「LITKOVSKA(リトコフスカ)」のデザイナー、リリア・リトコフスカ(Lilia Litkovska)氏が来日しました。東京・六本木の「エストネーション六本木ヒルズ店」で2025年3月29日~4月22日、チャリティーイベントが開催されています。

解体とテーラリングの詩的なアプローチで知られているブランドです。今回のコレクションもベーシックにひねりや意外感、マルチウェイなどの工夫を凝らした、魅力的なアイテムが並びました。

来日したリトコフスカ氏にインタビューしました。一問一答形式でお届けします。

 

ウクライナ発のブランド「LITKOVSKA(リトコフスカ)」、デザイナーにインタビュー

 

Q ブランドのコンセプトや持ち味は、どのように言い表すことができますか?

――LITKOVSKAは、伝統とモダニティの交わる部分に立ち、脱構築と時代を超えたテーラリングを対話の手段にしています。それぞれの作品には、ウクライナの職人技の本質が宿り、そこから現代的なシルエットへと導きます。私たちは、感情の深みを響かせる服を創り出し、力強さと繊細さ、精密さと流動性のバランスを常に追求しています。

 

 

ウクライナ発のブランド「LITKOVSKA(リトコフスカ)」、デザイナーにインタビュー

 

Q 2025年春夏コレクションに込めた思いや見どころ、注目してほしい点を教えてください。

――2025年春夏コレクションはウクライナ語で「収穫」を意味するコンセプトを掲げています。ブランドが過去15年間に積み重ねてきた成長を集約する象徴となっています。このコンセプトは、蒔いた種を刈り取るという考えからきています。想像、反映、再現のサイクルを通じて、ブランドの歴史とその絶え間ない進化を讃えています。ブランドのシグネチャーである脱構築的なテーラリングは25年春夏コレクションでも際立っています。無数に解体されたメンズウェアの定番アイテムを、女性の肩に羽織らせ、またテクスチャーやレイヤリング、象徴的な装飾への繊細で複雑なアプローチも際立っています。

25年春夏のテーマの核となる「収穫の伝統がウクライナ文化に与えた影響」にインスパイアされ、全てのアイテムが、「何を蒔いて何を刈り取るのか」という深いストーリーにつながっています。

 

 

ウクライナ発のブランド「LITKOVSKA(リトコフスカ)」、デザイナーにインタビュー

 

Q パリではこの3シーズン、プレゼンテーションやショーを続けています。そのアクティビティを通して伝えたいこと、続けることで感じていることとは?

――パリは世界の舞台であり、私たちがそこに存在するということは、ウクライナのデザインが国際的に重要であることを物語っています。これは、どんな逆境でも、私たちの文化、職人技、そしてビジョンは生き続けるという強い意志の現れでもあります。各シーズンのコレクションは、単なる衣服に留まらず、ウクライナの強さを宿した物語なのです。

 

Q 「リトコフスカ」の服を通じて、ウクライナという国を感じるには、どういったところを見ればよいですか?

――ウクライナは、その細部に息づいています。私たちの伝統や風習、共有し分かち合う喜び、コミュニティの力、そして集団的な記憶の中に。私たちは伝統的な要素を再解釈し、そのスピリッツを守りながら、現代にふさわしい形へと再創造しています。回復力、エレガンス、そして自然とのつながりが、すべての衣服に織り込まれています。

 

 

ウクライナ発のブランド「LITKOVSKA(リトコフスカ)」、デザイナーにインタビュー 

 

Q テーラーを長年営む家庭で生まれ育ったと聞きました。この環境で育ったことはリトコフスカさんのキャリアにどのような影響を与えていますか?

――私は、生地やパターン、そしてこだわり抜かれた職人技に囲まれて育ちました。この環境が、細部の構造へのこだわりとクラフトマンシップへの深い敬意を私の中に植え付けました。

 

Q テーラーを営む家庭で育ったことで得たことなどがあれば教えてください。

――私は、祖父が特別なノートにスケッチを描き、メモを取りながら未来の衣服を創造している姿をよく覚えています。彼は私に、テーラリングとは単なる縫製ではなく、生地と動き、身体と空間の間に対話を生み出すことだと教えてくれました。

 

 

ウクライナ発のブランド「LITKOVSKA(リトコフスカ)」、デザイナーにインタビュー 

 

Q ウクライナでは大変な状況が続いていると思います。そんな状況下でどのように創作活動を続けていますか? 戦時下という状況がデザインやブランド運営に与えた影響はありますか?

――戦争によって、あらゆる決断がより意味深いものとなりました。私たちの作品には「レジリエンス(回復力)」というメッセージが込められているので、私たちは作品を創り続けます。

コレクションのテーマだけでなく、それは、生産体制から、戦争の影響を受けた人々を支援するコミュニティ活動に至るまで、私たちのあらゆる取り組みに影響を与えています。

 

 

ウクライナ発のブランド「LITKOVSKA(リトコフスカ)」、デザイナーにインタビュー 

 

Q リトコフスカさんが今のような厳しい環境でも制作を続けているモチベーションの源を教えてください。

――創造こそが、私にとっての抵抗の形です。アートとファッションには、歴史を記録し、言葉では表せない感情に、声を与える力があります。私たちの作品が助けを必要としている人々の支えになると知ることが、私を前へ前へと突き動かす何よりのモチベーションになっています。

 

Q 服にリボンが添えられている理由は何ですか?

――リボンはシンボリズムをもたらします。それは過去と現在を結び、人々を繋ぎます。また、これはウクライナの伝統であり、文化的な服装にも見られ、団結と記憶を表します。

 

 

ウクライナ発のブランド「LITKOVSKA(リトコフスカ)」、デザイナーにインタビュー 

 

Q ファッションスクールを運営している目的は何ですか?

――School of Art x Craftは将来です。ファッションの伝統と観点を理解した新しいジェネレーションのデザイナーを育てる、私たちの知識を伝える方法なのです。

 

Q 「リトコフスカ」の服が伝えているという、ウクライナの伝統的な文化には、どういった特質がありますか?

――ウクライナの文化には自然とのつながり、そして職人技への深い敬意を示すという固有の強さがあります。それは私たちのシルエット、服の動きに、私たちがインスピレーションとしてみるストーリーに見られます。私たちのデザインは過去を尊重しつつ未来を見据えています。

 

Q ファッションにはどのような力があると信じますか?

――ファッションは言語であり、静かなストーリーの語りかたなのです。それは歴史を伝え、感情を呼び起こし、さらには変化を促すこともできます。

 

 

ウクライナ発のブランド「LITKOVSKA(リトコフスカ)」、デザイナーにインタビュー 

 

Q 今回、アートとの融合も見どころかと思います。ダリア・アルヨシュケナ・スタアロク氏のアートを選んだ理由を教えてください。

――ダリアさんの作品は伝統を現代的な形で体現しています。彼女の「ヴィティナンカ(vytynanka、ウクライナの切り絵アート)」は何世紀にもわたる慣習に沿っていながら、現代の空間にもパーフェクトにフィットし、世代間、さらには異なる文化間の特別な対話が生み出されるのです。

 

ウクライナ発のブランド「LITKOVSKA(リトコフスカ)」、デザイナーにインタビュー 

 

Q 東京でのイベントをどのように感じていますか。

――東京は職人技とディテールへのこだわりが深く、このインスタレーションには最適なセッティング、場所です。これは、私たちのストーリーを新しいオーディエンスと共有し、ファッションだけでなく、回復力と社会的ケアのメッセージにも関心を持ってもらう機会となります。

 

Q 今後、どんなブランドに成長していきたいか、デザイナーとして挑戦したいことは?

――「LITKOVSKA」の成長はただ単に拡大するのではなく、深さが大事なのです。私は、職人技と革新を融合させ、コミュニティ プロジェクトを強化し、持続可能なファッションの限界を押し広げ続けていきたいと思っています。チャレンジは、進化しながらも本物を維持することです。

 

Q 「リトコフスカ」の服を一言で表すなら?

――「ダイアログ(Dialogue、対話)」です。

 

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ウクライナ発「LITKOVSKA(リトコフスカ)」デザイナー来日インタビュー

 

■取材を終えて

今回のインスタレーションは「LITKOVSKA」の2025年春夏コレクションと過去のアーカイブを、ウクライナのアーティスト、ダリア・アルヨシュケナ(Daria Alyoshkina)氏のアートと一緒に展示し、ウクライナの美意識と「LITKOVSKA」の世界観を表現しています。

会場の壁にはダリア・アルヨシュケナ氏によるヴィティナンカ(切り絵)のエンジェル作品が展示されています。光が差し込むように穏やかな空間がウクライナ色の花々と共に広がり、静かに共感を呼び掛けるかのようです。

 

 

ウクライナ発のブランド「LITKOVSKA(リトコフスカ)」、デザイナーにインタビュー 

 

イベント期間中は、ウクライナ人道支援を目的としたチャリティー活動も行われています。店頭に募金箱が設置され、「LITKOVSKA」の売上金の一部は「CITY OF GOODNESS」という協力団体を通じて寄付しされます。

厳しい環境でも歩みを止めず進んできた「LITKOVSKA」が提案するプロダクトやアートが遠い東の国でファッションとつながり、ウクライナ支援へと循環することを目指すプロジェクトです。

 

 

ウクライナ発のブランド「LITKOVSKA(リトコフスカ)」、デザイナーにインタビュー 

 

「LITKOVSKA」は2009年にリリア・リトコフスカ氏によって設立されました。解体とテーラリングの詩的なアプローチで知られています。2017年以来、このブランドはパリ・ファッションウィークの公式スケジュールに参加しています。

今回の展示に掲げられたテーマ「Become Someone’s Angel」というテーマが心に深く響きます。ファッションの面でも評価が進むウクライナ。再生と修復への思いを込めたリトコフスカヤ氏の取り組みがウクライナの存在を世界に訴えかけています。

 

ウクライナ発のブランド「LITKOVSKA(リトコフスカ)」、デザイナーにインタビュー 

 

3年を超える戦いが続き、この上なく過酷な状況が続くウクライナ。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、ウクライナ側の民間人死者数は既に1万2600人を超えています。ゼレンスキー大統領はウクライナ軍兵士が4万6000人以上も死亡したと述べています。こうした中でもクリエーションを続け、次世代デザイナーを育てるリトコフスカヤ氏に日本で支持や共感が広がっています。今回のイベントがファッションのパワーと可能性をあらためて伝え、そして、「ファッション好きができること」を考えるきっかけになることを願います。

 

 

エストネーション六本木ヒルズ店
LITKOVSKA × ESTNATION Become Someone’s Angel
https://www.estnation.co.jp/feature/1217

LITKOVSKA
https://litkovska.com/

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