「あいちテキスタイルフェス 2026」リポート 三河木綿と尾州毛織の魅力を再発見

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「あいちテキスタイルフェス 2026」リポート 三河木綿と尾州毛織の魅力を再発見

「あいちテキスタイルフェス 2026」リポート 三河木綿と尾州毛織の魅力を再発見

 

愛知県が誇る二大テキスタイルの三河木綿(みかわもめん)と尾州毛織(びしゅうけおり)。その魅力を改めて発信するイベント「あいちテキスタイルフェス 2026」が名古屋市で2026年2月14日に開催されました。デザイナーによる特別なファッションショーと、産地の未来を語るトークセッションを通して、長い歴史を持つ両素材の新たな可能性が浮かび上がりました。お招きを受けて、現地で取材したリポートをお届けします。

ファッションショーには「まとふ(matohu)」の堀畑裕之氏と関口真希子氏、そして「ソマルタ(SOMARTA)」の廣川玉枝氏が参加。それぞれ今回のために特別な衣装をデザインしました。

 

「あいちテキスタイルフェス 2026」リポート 三河木綿と尾州毛織の魅力を再発見
■「まとふ(matohu)」のショー 三河木綿の魅力を現代に

「まとふ」は三河木綿の魅力を、現代の感性でどう表現するかに真正面から向き合ったコレクションを披露しました。

三河ストライプや刺し子といった伝統的な素材や表現を、軽やかでモダンなスタイルへと昇華。歴史を背負いながらも、どこか若々しいムードをまとったルックを提案しました。

メンズで目を引いたのは、刺し子織りのジャケット。剣道着や柔道着を思わせるざっくりとした風合いを持ちつつ、洗練されたたたずまいが際立ちます。藍染めを幾度も重ねることから生まれた、奥行きの深いグラデーションが存在感を放っていました。

パンツに再現したのは、約150年前の柄です。江戸時代末期から明治初期にかけての三河縞の見本帳に基づいています。かつて寝具用として使われていた柔らかな生地の心地よさも感じ取れました。

ウィメンズでは海を思わせるさわやかなルックが発表されました。からみ織りによるレーシーな透け感が光と風をはらむような軽やかさを生み出しています。ワンピースはエアリーな質感を宿していました。

シグネチャー的なロング丈アウターの「長着」をコート風に仕立てたアイテムは、ガーゼのように柔らかな織りで表現。日本の蒸し暑い夏にも寄り添う実用性を備えています。刺し子のコットンバッグも登場。表裏で市松模様を構成するといった、丁寧な工夫が細部にまで施されています。

タイムレスとモダンを重ね合わせることによって、三河木綿の新たな可能性を映し出していました。

 

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■「ソマルタ(SOMARTA)」のショー デジタルと手仕事の融合

「SOMARTA」は「デジタルクチュール」を掲げ、手仕事とデジタル技術を融合させたクリエーションを発表しました。「デジタルもまた、人が手を動かし、思考し、生み出すもの。そこに宿るのは、やはり人間の創造力です」と廣川氏は語りました。

立体的な生地はあえて低速で丁寧に織り上げ、独特の表情を引き出しました。織物としては難度の高い、キラキラと輝くフィルム素材を織り込んで、光を受けて奥行きと陰影を生むテキスタイルを採用していまます。

尾州の手織りでは、「もったいない精神」を体現。余った布を裂いてテープ状にし、再び織り込むことで、新たな格子状の織物へと再生させています。あえて糸をのぞかせたラフな質感は、均一ではないからこそ生まれる、手仕事ならではの豊かな表情です。

直線的なカッティングの着物コートはジェンダーレスな雰囲気を帯びています。折り紙染めと呼ばれる特殊な染色加工により、手染めのような趣深い色彩が広がりました。尾州のものづくりと職人の情熱に触れ、その技術を「世界に類を見ない日本の宝」と感じ、作品に落とし込んだそうです。

 

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■トークセッション 三河木綿編 過去・現在・未来を語る

ドキュメンタリー映画『わたのまち、応答セヨ』の予告編上映後には、業界の第一線で活躍する4人のパネリストが登壇しました。登壇したのは、日本テキスタイルデザイン協会(TDA)代表理事であり、Fab・4・Works代表の大場麻美氏、森菊株式会社テキスタイル部の大羽菜那氏、映画『わたのまち、応答セヨ』を手がけた岩間玄監督、そしてW TOKYO執行役員で東京ガールズコレクション(TGC)実行委員会チーフプロデューサーの池田友紀子氏。それぞれの視点から、三河木綿の過去・現在・未来が語られました。

愛知県蒲郡市を含む三河地方は1200年以上にわたり、綿と共に歩んできたコットンカルチャーの地です。綿花は799年にインドから伝わったとされ、16世紀に三河で本格的に栽培が広がりました。江戸時代には「三河縞」が確立され、華美を抑えながらも洗練を求める美意識が育まれていったようです。三河木綿の魅力は実直さといわれます。丈夫で長持ちする生地は農作業着や寝具、柔道着などに幅広く用いられてきました。

産地の強みは、先染めから製織、整理加工までを地域内で完結できる「チーム型」の体制にあります。一方で、1990年代以降の中国での生産拡大に伴い、企業数は激減。かつての「ガチャマン」時代からは大きな転換期を迎えました。

岩間監督によるドキュメンタリー映画や、TGCとの協業が新たな動きになっています。映画の中で「三河コットンストライプ」がロンドンで高い評価を受けたことも、地元の誇りを呼び覚ますきっかけとなりました。

いま求められているのは、早さや安さではなく、「ここでしか作れない価値」を物語と共に発信することでしょう。三河木綿がこれからどのように価値を発信していくべきか、熱のこもった意見が交わされました。

 

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■トークセッション 尾州毛織編 世界から注目される理由

映画『BISHU ~世界でいちばん優しい服~』予告編上映後に行われたトークセッションには4人が登壇し、尾州の魅力を多角的に語り合いました。

尾州は1000年以上の歴史を持つ日本有数の毛織物産地であり、改めてラグジュアリー市場から関心を集めています。ラグジュアリー文化研究家の中野香織氏は、世界のハイブランドが評価する尾州毛織の本質を解説。求められるラグジュアリーの価値について論じました。

尾州産地企業である国島株式会社 代表取締役社長の伊藤核太郎氏は、現場の視点から尾州の技術力と産地の現状、そして未来への展望を語りました。ファッションデザイナーの信國太志氏はクリエイターの立場から尾州素材の可能性と国際的な競争力について話しました。先に登壇した池田友紀子氏は若い世代向けの発信やブランディングの重要性を述べました。

イタリアの艶やかさ、イギリスの構築性に対し、尾州は「ソフトからハードまで自在に表現できる柔軟性」が強みだそうです。繊細な色表現や高精度な品質対応、軽さとハリを両立する素材開発などが強みになっています。

2020年以降、ラグジュアリーの価値基準は「どこで、誰が、どう作るか」へと変化してきました。かつて下請けに徹していた産地も、いまはパートナーとして名前を出し、企画段階から関わる時代へと移行しています。「尾州」という産地名そのものをブランドと位置づけるのも大切になってきつつあるようです。

一方で、この30年で生産量が減少という厳しい現実があります。それでも若い世代が産地を訪れ、素材に触れ、可能性を見出す動きが広がっています。TGCとの連携や若手デザイナーとの取り組みも新たな接点を生み出しているようです。それぞれの意見がまるで織物のように重なり合い、尾州毛織のこれまでの歩み、いまの姿、そしてこれから目指す方向性が見えてくるセッションとなりました。

 

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当日はファッションディレクターの干場義雅氏と、ZIP-FMナビゲーターの永田レイナ氏が進行を担当。知性と感性が響き合うトークで会場が大いに盛り上がりました。

会場となった「エスパシオ ナゴヤキャッスル」は2025年10月に開業した、名古屋城の目の前に位置するラグジュアリーホテルです。地元食材を生かしたアミューズやドリンクを味わいながら、来場者同士が和やかな時間を共有しました。上質な空間のなかで、「あいちテキスタイル」の奥深い魅力を確かめるひとときとなりました。

 

あいちテキスタイルフェス 2026
https://aichi-nagoya-fashiondays.com/aichi_textile_fes2026.html

 

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