「matohu(まとふ)」の表参道本店がオープン5周年を迎えました。これを記念して、ゲストアーティストイベント「立原位貫 木版画で日本の美に触れる」展が2016年7月23日~31日に開催されています。
たった1人しかいない「現代浮世絵版画師」と呼ばれた木版画家の立原位貫(たちはら・いぬき、1951~2015年)。江戸時代の浮世絵版画を復刻、復元して、当時の手法や絵の具で現代によみがえらせた功績で知られています。惜しまれつつ15年夏に64歳で亡くなったのですが、生前に交流のあった堀畑裕之、関口真希子の両デザイナーが遺志を継ぐ形で「matohu」での展覧会が開催されました。
長く失われていた江戸浮世絵の版画技法を顔料・染料や紙、道具類まで含めてよみがえらせました。江戸浮世絵の復刻で有名ですが、実はそれ以上の存在と言えます。なぜなら、江戸期の浮世絵は、下絵を描く「絵師」のほかに、「彫り師」と「摺り師」が加わって、作品が制作されていました。一般に知られる北斎や広重、歌麿らはいずれも「絵師」でした。総合的な「職人芸術」として浮世絵が生まれていきました。
ところが、位貫は下絵を描くのをはじめ、彫り、摺りまで全工程を1人でこなしたのです。その点において特別な浮世絵画家と呼べます。絵の具や紙を求めて全国を訪ね歩き、独力で道具類を手に入れていきました。もちろん、復元にとどまらず、オリジナル作品の制作も数多く試みています。
創作技法に加え、自身の軌跡も型破り。もともとはジャズサックス奏者でしたが、東京を捨てて郷里に戻ります。25歳でたまたま巡り会った1枚の浮世絵版画に魅せられ、独力での浮世絵制作を始めました。すべての作業を1人でこなしたのは、そもそも江戸浮世絵の分業制を知らなかったからだというエピソードは、彼の試みがいかにピュアで挑戦的だったかを物語っています。
国内外のアーティストを表参道本店で紹介する「ゲストアーティストシリーズ」は今回で第8弾を数えます。今回の展覧会に合わせて、位貫作品のモチーフを生かしたシルクスカーフ、財布などの限定グッズが販売されます。レターセット(4種類)も用意されました。
レセプションパーティーでのケータリングで目をひいたのは、上品な風情の「わらび餅」。こちらは京都市の和菓子店「とま屋」の品。位貫の奥様、やよ飛さんが営む、知る人ぞ知る名店です。哲学の道に近い店舗のデザインは生前の位貫が手がけたそうです。
これまでアトリエとして使われてきた表参道本店2階スペースには、ブランドのシグネチャー的アウター「長着(ながぎ)」のオーダーサロンが新たに設けられていました。30種類近い生地やライナー、ボタン、真田紐などを自分好みにチョイスできます。サイズ、丈を体型に合わせて仕立ててもらえるのは、長く着続けるうえでとてもありがたいところ。メンズ、ウィメンズ両方で受け付けています。
1階のメインフロアでは2016-17年秋冬コレクションのアイテムが一足早い秋を招き入れていました。秋冬のテーマは「おぼろ」。なお、今回の展覧会最終日は位貫の命日に当たります。展覧会タイトルの通り、「日本の美に触れる」うえでまたとない機会となりそうです。
matohu 表参道本店 5周年記念 ゲストアーティストシリーズ Vol. 8
「立原位貫 木版画で日本の美に触れる」
期間 7月23日(土)~7月31日(日)
時間 11:00~20:00
場所 matohu表参道本店
住所 東京都渋谷区神宮前5-9-25
URL http://www.matohu.com/news/2016/06/matohu_vol_8.html
matohu
http://www.matohu.com/
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