パリの伝説的なセレクトショップだった『COLETTE（コレット）』が2017年12月に閉店するまでの数カ月を追ったドキュメンタリー映画『COLETTE MON AMOUR (コレット・モン・アムール) 』が2020年９月26日（土）から10月８日（木）まで渋谷パルコで公開されています。創業者のコレットさんと娘のサラさんという名コンビが店をどう支えてきたかが明かされていて、感動的なストーリーに仕上がりました。コンセプトストアとも呼ばれた名店だけに、ファッションやショップ運営に興味にある人におすすめのハートウォーミングな記録映画です。
私も何度か訪れた「コレット」は、ファッションの歴史を書き換えた名ショップでした。全体は３フロアの構成で、地下１階はウォーターバー＆レストラン、１階は雑貨や書籍、アート関連、２階がファッションというレイアウトです。ギャラリースペースも人気でした。２階のファッションフロアに置いてもらえるのは、バイヤーを勤める娘のサラの目利きにかなった逸品だけ。「コレットに置かれた」という事実そのものがブランドの宣伝文句に使われるほどのセレクトで知られていました。
NIGO®
Pharrell Williams
Kanye West
VIRGIL ABLO
CHITOSE ABE
「コレット」が特別だったのは、民主的でフラットなスタンスです。ブランドの「格」や価格の高さに関係なく、デザイン性や同時代感などを優先して、独自のポリシーを貫き、売り場を編集し続けました。NIGO氏が述べている通り、ストリートファッションをラグジュアリーブランドと同等に扱い、日本ブランドの存在も世界に広めてくれました。映画にはファレル・ウィリアムス、カニエ・ウェスト、バージル・アブロー、阿部千登勢といった各氏が登場。「コレット」のすごさや魅力を証言しています。
INO MASAYUKI
YOON & VERBAL
JULIEN DAVID
MASAMICHI KATAYAMA
たくさんの有力ブランドとのコラボレーションを実現したのも、「コレット」の伝説です。日本のブランドやアーティストとのコラボも多く、今回の映画では「DOUBLET（ダブレット）」の井野将之デザイナーが「サラは何も説明を受けなくても、デザインの本質を見抜いていた」と、目利きのすごさを振り返っています。店舗デザインを手がけた片山正通氏が語った「同じ品物を別の店で売っていても、コレットで買いたくなる」という言葉は、ショップが成り立つうえで大事なことを教えてくれます。
KAWS
RONNIE FIEG
KEVIN LYONS
Pedro Winter
15年以上も親しくしてきた監督だからこそ撮影を許された、「コレット」の素顔で印象的だったのは、ショップスタッフのポジティブで気持ちいい働きぶりです。「コレット」のあったサントノーレ通りはブランドショップが軒を連ねる通りですが、「コレット」は多くのブランドショップとは異なり、スタッフの採用に人種や外見の条件を設けず、人柄や才能を重視。売り場で来店客に気さくに話しかけ、丁寧に応じる接客がファンを増やしました。この映画には閉店まで走り抜けたスタッフたちの姿が収められていて、ショップと働き手の理想的な関係を印象づけています。
20年間にわたって、大入りを続けた点でも特別な存在でした。突然の閉店を決めた理由は、映画の中でコレットさん本人の口から明かされています。なるほどと納得できる理由ですが、パリ名所でもあった人気ショップを閉じる決断のいさぎよさには敬服させられます。ほとんど毎日のように、開店前から閉店後までショップに居て、レジ周りに姿を見せていたコレットさんのオーナーシップは、スタッフ全員の絆でもありました。うらやましいところばかりのチームとショップが存在していたことを確認できて、同じその空間に身を置くチャンスがあったことを、あらためて幸福に感じました。
『COLETTE, MON AMOUR』
作品： ドキュメンタリー 60 分
言語： フランス語 、英語 、日本語
製作： HLB, La Pac Film , Highsnobiety
監督： Hugues and Eliane Lawson Body
編集： Thibaut Sève
会場： ホワイト シネクイント WHITE CINE QUINTO
東京都渋谷区宇田川町 15-1 渋谷 PARCO ８ 階
日時： 2020 年 9 月 26 日 （土) ～ 2020 年 10 月 8 日 （木) 2週間限定公開
https://www.cinequinto.com/white/movie/detail.php?id=192
