バロックジャパンリミテッドは2016年9月の2017年春夏ニューヨーク・ファッション・ウイーク期間中に、NYで主力ブランド「MOUSSY(マウジー)」と「ENFOLD(エンフォルド)」の直営路面店をオープンしました。米国市場への本格参入となります。「マウジー」はソーホー地区に、「エンフォルド」はウエストビレッジ地区に出店しました。
9月9日にオープンした「エンフォルド」があるのは、マンハッタンのWest Village(ウェストヴィレッジ)地区。地元のおしゃれな人が並木道を散歩をしていたり、ショッピングを楽しんでいたりする姿を目にする場所です。公園の目の前にある新ショップは、店内外にベンチが設置されています。店内ではグリーンのインスタレーションが心地よいムードを醸し出しています。「再構築」「未完成」「リユース」「PARK」「ART」がテーマ。店舗デザインは、Bohlin Cywinski Jackson(ボーリン・シウィンスキー・ジャクソン)氏が手がけました。世界中のアップルストア旗艦店を設計・建築していることでも知られています。
翌10日にオープンした「マウジー」は、NYのSOHO(ソーホー)地区に登場。多くの買い物客で賑わう人気のエリアです。ブランドのシグネチャーアイテムでもある、MADE IN JAPANのデニムを大きく打ち出した、和を感じさせる店内が印象的です。ファッション感度の高い客層を中心に、ジャパンデニムのクオリティーをアピールしています。ファッションアイテムと雑貨を集めた売り場構成です。
オープンにあたって、村井博之バロックジャパンリミテッド社長兼最高経営責任者(CEO)と「ENFOLD」クリエイティブ・ディレクターの植田みずきさんに狙いや意欲をうかがいました。
◆村井博之バロックジャパンリミテッド社長
出店の経緯に関しては、「グローバル力を考えて、アメリカに出ました。アメリカは経済は悪くない状況。でも、ファッションの消費は厳しい。その状況がどうなるのかに興味がありました。さらなる成功に向けて試したいという気持ちがあります。また、アメリカは対面式の販売の動きが悪くなり、EC(電子商取引)のほうに流れています。対面式を得意とするバロックがどこまでNYで結果を出せるのか試してみたい」とコメントしています。
NYでのショップが情報収集やものづくりにどういった効果を期待できるかについては、「アメリカで起こったことがほぼ半年とか1年ぐらい後に日本で起きる流れが続いている。たとえば、日本も経済はいいのに、服に関しては、去年はそこそこ売れていたけど、今は少し厳しくなってきているという点でもNYと動きが似ている。NYにアンテナを張り巡らせることで日本の今後の動きが見通しやすくなると考えています」と述べました。
日本からのファッション提案はどういう点が受け入れられるのかについては、「マウジーは2000年代に『渋谷109』でスタートしました。いわゆる『マルキュウ』ブランドとしてトップの地位を築いたブランドです。一方、エンフォルドは「ドメコン(ドメスティックコンテンポラリー)」という新たな地位を築きました。両ブランドとも新しいカテゴリーを日本で作ってきたんです。一つのブランドが人気を得ると、そのカテゴリー全体が同質化してしまうような、他社のブランドやカテゴリーとは立ち位置が違うと考えています」と語りました。
◆植田みずきさん
NYでのターゲットに関して、「NYのおしゃれ好き、エグゼクティブ、働く女性、ママさんなど多くの女性に着てもらいたいと考えています。この店は目の前が公園なので、近くに住んでいるような女性をイメージしています。3年前からパリでエンフォルドの展示会を開催しており、通常のラインのほか、コレクションラインというのがあり、それがパリでも受けています。特殊なパターンで構築されたインパクトのあるアイテムでありながらも、女性的な美しさを表現しています。NYでもコレクションラインを日本よりも多く扱います」とコメント。
サイジングの工夫に関しては、「パリで展示会を始めてから、パンツは6サイズを展開しています。サイズに関しては準備ができているので、不安はありません。ただ、検討を重ねているのは、気候の違いについてです。東京では冬でも最近暖かいので、防寒コートはそんなに需要がないのですが、寒いNYではそれが必要。真冬仕様のアウターをNY向けにデザインしようと思案中です」と語りました。
日本のファッションブランドとしてのアイデンティティーについては、「ブランドコンセプトである『隠された美』を重視しています。隠すことで美しさを引き出すという日本文化を意識してきました。そして、いやな所を隠すのも日本的な考え方。そういった『隠して美しい』ということを発信していきたいと思います。見た目上では特段のジャポニズムは押し出さないので、日本のブランドとは気づかれないかも知れません。手に取って見たら、実は日本のブランドだったんだという感じがエンフォルドらしさです」と話していました。
インタビューを終えて感じたのは、村井社長と植田さんに共通していた、NY進出にポジティブな姿勢でした。日本で立ち上げ、海外マーケットでも育ててきた、自分たちのブランドに自信を持っていて、NYでもっと広げていきたい、さらに上のステージを目指したいという意欲が強く伝わってきました。
ENFOLD WEST VILLAGE
411 Bleecker Street New York , NY, 10014
www.enfold.jp
MOUSSY SOHO
474 Broome Street New York , NY, 10013
www.moussy.ne.jp
********************************
◆グラム 宮田理江の「ファッションeye」更新中
◆アパログ 宮田理江の「おしゃれhack」更新中