現代アート展の『2021年宇宙の旅 モノリス_ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ展』が東京・表参道のGYRE GALLERYで2021年2月19日(金)から開催されます(4月25日まで)。SF映画の傑作『2001年宇宙の旅』(1968年)に着想を得て、さらにその「先」へいざなうかのようなアート展ですが、映画そのものを題材にしているわけではないので、映画を観ていなくても、十分に楽しめる内容になっています(観覧無料)。
映画の時代背景となった2001年から20年の節目に、映画のキーモチーフになった「モノリス」をはじめ、映画が発した問いかけを、宇宙旅行やAI(人工知能)が現実となった今の視点から、アート作品を通してとらえ直していくような試みです。赤瀬川原平作品の『宇宙の罐詰』や、アニメキャラクターが月面をさまよう映像、時間軸の崩壊を「見える化」した作品などが展示されています。
幻想的なムードを漂わせる、光るストーンサークル風の『トランスサークル』(森万里子)、ブラックホールに引き込まれるかのようなたたずまいの『Syphon Mirror – Kuro』(アニッシュ・カプーア)など、SF的な気分に誘われる作品は、観る者の脳内イメージを膨らませてくれます。個人的には微生物が服を作っていく『Mushtari : Jupiter’s Wanderer』(ネリ・オックスマン)に興味を覚えました。
理系・文系といったジャンルを飛び越えて、テクノロジーとの向き合い方や、人間の本質、未来の可能性など、様々なテーマにわたって、思考を刺激されるキュレーションです。テーマ別の3ゾーンに分かれて、アーティスト9組の作品が配置されていて、多面的に刺激を受けられます。
新型コロナウイルスという、たった1種類のウイルスでこれほどの危機に追い込まれた出来事は、人類の小ささや弱さをあらためて気づかせることにもなりました。宇宙の規模や時間軸で考えると、さらに人間の居場所の狭さが感じ取れます。各作品はそれぞれに単独のアート表現でありつつ、展覧会全体としても共振して、人類や知、生命のありようを問いかけてくるかのようです。
9組のアーティストはそれぞれに独創的な手法で、人類や時間、生命、宇宙などのイメージを紡ぎ出していて、映画が発した問いかけの向こう側へと、観る者の手を引いてくれます。外出するタイミングを選ぶ状況が続く中ですが、わざわざ表参道まで出掛ける価値が感じられる展覧会です。
・展覧会情報
2021年宇宙の旅 モノリス
_ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ
https://gyre-omotesando.com/artandgallery/2021-a-space-odyssey/
主催 GYRE / スクールデレック芸術社会学研究所
会期 2021年2月19日(金)~4月25日(日)
会場 GYRE GALLERY
住所 東京都渋谷区神宮前 5-10-1 GYRE 3階
Tel 03-3498-6990
出展作家 赤瀬川原平、アニッシュ・カプーア、ピエール・ユイグ、オノデラユキ、森万里子、 ダレン・アーモンド、ネリ・オックスマン、ジェームズ・ブライドル、プロトエイリアン・プロジェクト