(2005/3/29) 「愛と孤独、そして笑い」その2

東京都現代美術館(東京・木場)のグループ展「愛と孤独、そして笑い」のレポートの続きです。インスタレーション作家のイチハラ ヒロコ氏は太いゴシック体で短いインパクトのあるフレーズを大書する作風です。

 書かれた言葉は雑誌の見出しのようで、インパクト大。俳句のような短い言葉で、現代女性の心理を端的に表しています。

 「万引きするで。」はかなりキョーレツです。「一生遊んで暮らしたい。」という言葉にも釘付け。「これ、ワカル。でも、言っちゃいけない」っていう言葉を堂々と言ってくれてありがとう。そんな感じで心の中で大拍手してしまいました。

 女性が持っている多面性。「本音はこうなんだ」という辺りをユーモラスに表現しています。「友達どまりは決定なのかね。」「チャンスをなんどもあげたのに。」「ま、いいか。8回もキスしたし。」なども納得。恋愛に関して強気の部分と臆病な面の両方が出ていました。

 私が一番気に入った言葉は「いやでも生きる。」です。いろいろな出来事があって、いろいろなことを考えて、でも、最後には「いやでも生きる。」わけです。この言葉は女性の強さを象徴していると思います。女にとってシビアで生きにくい現代ですが、でも、どうにかなるさっていう明るい気持ちにさせられた言葉でした。

 映像作家・岡田裕子氏の展示室では、部屋に入ると、いきなり仏壇が置いてあります。岡田氏本人が主婦役を演じているこの映像作品のテーマは「SINGN’ IN THE PAIN」。普通の主婦が突然、名作ミュージカル映画「Sing’in in the Rain(雨に唄えば)」の主題歌を歌いながら外に踊り出し、団地周辺で踊り狂ったあげくに部屋に戻って、ビニール傘で自殺してしまうブラックコメディです。

 この映像には衝撃を受けると同時に、共感できる部分もありました。結婚して主婦になり、幸せに暮らしているはずなのに、他人にはそう見えても、内実は違っていたわけです。女性にとって何が一番幸せなのかをあらためて考えさせられると同時に、現代女性の複雑な内面にもうなずかされた作品でした。

 10人の女性作家は現代女性の思いを様々な手法で作品化していました。それぞれに異なるアプローチや視線を通して、女性の生き方にはもっと選択肢があっていいし、もっといろいろなタイプの女性がいていいんじゃないかなぁ、という思いを強くしました。

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