黒河内真衣子デザイナーが手がけるブランド「Mame Kurogouchi(マメ)」はパリ・ファッションウイーク期間中の2018年3月2日、プレゼンテーション形式で2018-19年秋冬コレクションを発表しました。パリ・ファッションウイークへの初参加となりした。黒河内氏は17年10月に第1回「FASHION PRIZE OF TOKYO」を受賞しています。今回のパリ参加は受賞の特典となっていました。
このエキシビションはフランス語で「新しい波」を意味する「ヌーヴェル・ヴァーグ」と名付けられています。映画の文法を書き換えたとされる、フランス映画のムーブメントも指す言葉。モダンなファッション表現と日本の伝統的な服飾文化を織り交ぜた、黒河内氏の折衷主義的アプローチにも似つかわしく見えます。
編み物の技法をふんだんに取り入れています。西洋的なニットではなく、日本の伝統的な民芸の蓑(みの)、藁細工からインスピレーションを受けたという、手仕事感の高い編み地が繰り返し登場します。
コートやワンピースといった、服のカテゴリーに収まりきれないようなウエアが重層的なレイヤードルックを組み上げています。全体に量感がリッチで、指先まで隠す長い袖、たっぷりのマキシ丈などが流れ落ちるようなシルエットを描き出しました。フリンジ風に糸や紐、細革を垂らして、ボーホーな気分も寄り添わせています。
ニットとレース、メッシュなど、風合いの異なる素材同士を複雑に組み合わせ、1枚でマルチレイヤードに見えるような仕立てを試しました。あちこちに切り替えを施し、農村に伝わる襤褸(ぼろ)文化をモダナイズしたかのようなパッチワーク風のディテールが着姿に深みをもたらしています。
包み紙にかける飾り用の水引のデザインから引用していることからも分かるように、日本のクラシックな工芸や生地・素材へのリスペクトが随所に感じられます。着物のエッセンスをさりげなく生かしつつ、全体はモダンなデザインにまとめ上げました。誠実なクラフトマンシップが飾らない上質感をまとわせています。
程よく「和」の風情を写し込んでいます。和風の植物柄はウエアだけではなく、ブーツにも刺繍であしらいました。切り子細工風の透明なバッグも目をひきました。
和と洋の折衷は、約束事や枠組みにとらわれないインディペンデントな女性像を引き立てています。時空を越えるクロスオーバーは日本人デザイナーがパリから発信するのにふさわしいボーダーレス感も醸し出していました。
Mame Kurogouchi
https://www.mamekurogouchi.com/