「beautiful people(ビューティフルピープル)」は2018年3月6日、パリ・ファッションウイークで2018-19年秋冬コレクションを発表しました。パリでは初めてランウェイショー形式で新作を披露。モデルの動きがシルエットの美を引き出す「カッティングの妙」を印象づけました。
パタンナーの経験が長い熊切秀典デザイナーは、布地を斜めに裁断して衣服を仕立てる「バイアス(斜め)カット」の技法をふんだんに取り入れて、布のドラマをつづりました。斜め方向のカッティングはフィット感を出したり、ドレープを描き出したりといった効果で知られています。
バイアスカットは身体との関係性が深く、女性的な曲線を際立たせます。たとえばトレンチコートのように男性的なシルエットの服でも、バイアスカットで仕立てればフェミニンなドレスライクの表情を帯びます。考案者とされるマドレーヌ・ヴィオネへオマージュを捧げるかのようなバイアス使いは自然な形でメール(男性)とフェメール(女性)をねじり合わせています。
トレンチコートをはじめ、シグネチャー的存在のライダースジャケット、ポンチョ風のブランケットドレスなどもバイアスカットの流麗な曲線美を帯びました。1枚仕立てのように整えた装いが作り込んだパターンへのこだわりを感じさせます。初めてのショーに、小手先の細工で臨まず、あえて服に技巧を潜ませた提案に、自らのオリジン(原点)を再確認するかのような自負がにじんでいます。
丁寧なテーラーリングを施したアウターは部分的に細く締めたり、たっぷり布を遊ばせたりと、緩急のリズムをつけています。不ぞろいな量感が着姿を弾ませ、ジェンダーの境目までもぼやかしていきます。奇をてらってはいないのに、パターンメーキングの確かさがしっかり伝わるアイテムはデザイナーの分身と映ります。
センシュアル(官能的)なのにナイーブ。構築的なのに流れ落ちるよう。布に込めたダブルミーニングが女性の内なる多面性まで映し出していました。
beautiful people
http://www.beautiful-people.jp/