女性の本質を問い直すようなクリエーションがモード界をざわめかせています。「ALEXANDER McQUEEN(アレキサンダー・マックイーン)」が2018年3月5日、パリ・ファッションウイークで発表した2018-19年秋冬コレクションでも、昆虫をモチーフに用いて、女性的なるものの「メタモルフォシス(変容)」が表現されました。
自然界に着想を求める動きが広がる中、Sarah Burton(サラ・バートン)氏は蝶やカブトムシなどの昆虫を題材に迎えました。幼虫からサナギ、そして成虫へと変態を重ねる虫たちは女性の多面性や成長を象徴する存在として位置付けられています。透け通る翅(はね)やつややかな甲皮のイメージがチュールやタキシード、レザージャケットに写し込まれています。
タキシードライクなパンツスーツで幕開け。マニッシュなパワーショルダーも繰り返し登場しました。硬質なテーラーリングやウエストを細く絞ったシルエットと、はかなげなレース使いやセンシュアル(官能的)なベルベット仕立てを響き合わせ、ジェンダーのハイブリッドを組み上げています。ストライプを施したマニッシュなコートやケープ、ブランケットからは、ミリタリーの要素を感じ取ることができます。
シューズやジュエリーにも工夫が施されています。バイカラーのライディングブーツは視線を足元に引き込みます。蝶や蛾、てんとう虫、蜘蛛など、アシンメトリックな淡水パールによって装飾されたジュエリーも装いを高揚させます。
蝶のプリントがあしらわれたウエアは女性の繊細な内面を映し出します。一方、シルエットはたおやかな曲線を帯びながらも、構築的な強さを宿していて、女性の二面性を感じさせます。コートとドレスを融け合わせたようなハイブリッド設計の服にも、複数の顔や役割を兼ね備える現代女性のマルチキャラクターが託されていました。多様性が求められる時代にふさわしい、新しい女性像を作品に託したコレクションでした。
ALEXANDER McQUEEN
www.alexandermcqueen.com