「MOSCHINO(モスキーノ)」はミラノ・ファッションウィーク期間中の2019年9月19日、2020年春夏コレクションを発表しました。ジェレミー・スコット氏が発表した作品には、アート界の巨人、パブロ・ピカソへの愛とリスペクトにあふれていました。ピカソ作品の一部やモチーフが随所に盛り込まれ、飛び抜けてグラマラスでウィットフルなショーとなりました。
ピカソは世界で最も有名な現代アーティストの1人ですが、あまりに表現フィールドが幅広く、時代ごとに作風も異なるので、「キュビズム」「抽象画家」といった、小さなくくりで誤解されがちです。しかし、今回のコレクションで、ジェレミーは陶芸や版画まで含めた活動領域を見渡しつつ、具象から始まり、プリミティブへと画風を変化させ続けた巨匠の軌跡をきれいに写し取っています。
アート作品を着想源にする場合、アート側に引き寄せられがちですが、ジェレミーはピカソへの敬意を払いながらも、自分らしく読み替えています。共通する感覚は「ユーモア」。もともとは2次元の絵画作品を、モデルが着る3次元作品にトランスフォームすることによって、生命感やリアルさも上乗せしています。
プレスリリースは、たった1行のメッセージ。「ミューズ達はアーティスト達をインスパイアし、アーティスト達は世界からインスパイアした」。ジェレミーのこの言葉は、モデルになった女性に特別な感情を抱くこともあったピカソの生涯を通して、クリエイターとモデル、社会の関係性を示しているかのようです。
この言葉にふさわしく、このコレクションでは道化師や闘牛士など、ピカソ作品でおなじみのキャラクターを、それぞれのモデルが演じるような形で登場。ピカソが得意としたコラージュや誇張、カラフルタッチなどとともに、作品に命を吹き込む役割を果たしています。膨大な作品群から、特徴的なピースやディテールを選び出した、ジェレミーのサンプリング能力が「動くピカソ史」をランウェイ上に現出させました。
先にメトロポリタン美術館で開催されたファッション展覧会では、キッチュぎりぎりのきわどい感覚「camp(キャンプ)」がテーマに選ばれました。今回のコレクションにはキャンプ精神に通じる、ジェレミーならではのウイットに富んだ表現が感じられました。
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