「Mame Kurogouchi(マメ クロゴウチ)」はパリ・ファッションウィークで2023-24年秋冬コレクションを発表しました。先シーズンに引き続き、20世紀初頭に日本で飛躍した竹籠とその周辺文化に主軸を置きながら、それらを生み出した多くの作家がたどり着いた精神世界へと歩を進め、力強さと削ぎ落とされた美の共存をうたい上げます。
黒河内真衣子デザイナーを魅了し続けるのは飯塚琅かん斎(1890~1958年)の作品です。琅かん斎作品に共通する荘重な色調、重厚さと軽妙さを併せ持つ造形 バランス、伸びやかに交差する線の優雅さは今季のコレクションをそのまま形容する表現となります。
特殊な編み機を用いたスライバーニットによるボリューミーなウールのボアコートやベストが披露されました。職人が1枚ずつ手作業で折り畳み、注染の技術を用いて染め上げる「折り紙染め」によるアルパカウールのニットはおおらかな竹籠の線のようにプレイフルなグラフィックとなり、コレクションに軽妙なリズムをもたらします。
ラッセルストライプとトーションレースが重なり合い、組み上げられ、複雑に挟み込まれたドレスは、竹籠の躍動、交差する無数の網目を軽やかに、力強く体現します。籠の編みを型紙を用いた精緻なプリーツで再現したトップスやスカートは、まるで竹の葉を叩く時雨のように走る無数の細かな線が静かな奥行きを印象づけます。
カラーパレットはブラウンやカーキなどあくまでナチュラルな色調に加え、ブラックや情緒豊かなネイビーが差し込まれ、竹風が葉を鳴らす月夜を想起させるかのよう。アクセサリーは竹を用いたピアスやバングルが漆を思わせるダークブラウンをまとって登場。竹の反発性を生かしたデザインとゴールドのコンビネーションがコレクションを彩ります。
竹籠作家たちの造形、自然を師とする精神性が黒河内氏による解釈を経て、オリジナルファブリックや、それらを生かす多様なシルエット、複雑なテクニックによって、洋服として表現されています。先シーズンから続く取り組みが一段と深みを感じさせるコレクションです。