「beautiful people(ビューティフルピープル)」は2022年スプリングコレクションを2021年6月25日、東京・青山のスパイラルホールで発表しました。“One garment fits various scenes”というメッセージを掲げて、着る人や場面、着こなしを選ばない「ワンウエア」の装いを提案しました。
上下・左右・前後などをスイッチして着られる服に象徴される、決まり事や常識にとらわれない、スリリングな提案を重ねてきた熊切秀典デザイナー。今回は建築家ミース・ファン・デル・ローエの名言「LESS IS MORE」から着想を得て、ユーティリティーな仕掛けのウエアを披露しました。
しんなりとボディになじむワンピースや、ハイウエストのゆったりパンツなど、「計算された自然体」と呼べそうな、コンフォート感が見て取れるアイテムがよういされました。見た目のギミックではなく、本質的な機能に絞り込むローエ主義を感じさせる手つきです。
服の構造を問い直す「Side-C」のアプローチはさらに熟成度を高めています。シグネチャーアイテムのライダースジャケットは襟の形がトランスフォーム。共布ベルト付きのフレアスカートも別のシルエットに変化します。
カラビナ状のバックルや、登山ロープ風のベルトにも「シーンフリー」の思想がのぞきます。手首に着けた、フリンジ付き小物はアクセサリーとミニバッグを兼ねたような見え具合です。
今回のコレクションでは、ワコールメンとコラボレートした、性別を越えて共有できるワンサイズ仕様のインナーウエアを発表。コンバースとのコラボでは、晴雨兼用のスニーカーを企画しました。どちらも着る人や着ていくシーンにとらわれない融通自在のアイテムです。
ジャンルや用途を細分化するのではなく、使い勝手を優先して、着る人のストレスを減らす取り組みは、心理的なコンフォートウエアにつながります。匠のパターンテクニックが大胆な新発想を裏打ち。「使い勝手」の上を行く自由感をコレクション全体にもたらしていました。