「日本の若手デザイナーの発掘と支援」を目的としたプロジェクト「TOKYO NEW AGE（東京ニューエイジ）」は毎シーズン、挑戦的なクリエーションを発表しています。坂部三樹郎氏と山縣良和氏がプロデュースする若手デザイナーのグループです。2016-17年秋冬の東京コレクションでも５組の新鋭が新作を披露しました。彼らのクリエーションは、新たな才能をバックアップするパルコが支援していて、日本のファッション業界が次世代を育てる取り組みとしても注目を浴びています。
トップバッターを務めたのは、大月壮士氏の「SoshiOtsuki（ソウシオオツキ）」。メンズのパンツは太ももまで切れ込んだ深いスリットが左右両方に施されています。上半身をはだけて、ジャケットを腰に巻くようなスタイリングも見せました。花をオブジェ風に用いて、装いにロマンティックなムードを引き寄せています。パンツの両サイドにこしらえた深いポケットに花を一輪挿しにする演出も目を惹きました。
二番手の「kotohayokozawa（コトハヨコザワ）」はムードの異なる作品を並べました。ボタニカル（植物）柄をペイズリー風にゆがませたエスニック調プリントのロングワンピースは穏やかな着映え。一方、シャイニーなシルバータイツのボディースーツっぽいボトムスは宇宙的な雰囲気。ドレープを利かせたティアード（段々）仕立ての装いはガーリーな風情。レザー１枚をまとったようなトップスは革の質感がクラフト感を漂わせています。
先シーズンに「ゲームセンターにいそうな男の子」と評されるダサめルックで話題を呼んだ「KEISUKEYOSHIDA（ケイスケ ヨシダ）」。今季は「インドア派おたくが突如、ロックに目覚めて、おしゃれを頑張っちゃった」という設定で、「残念な背伸び感」いっぱいのルックを組み立てました。主体のメンズではダメージドジーンズやニーハイ・ブーツなど、パンク系のアイテムをやりすぎ気味にミックス。ウィメンズではレオパード柄や網タイツを投入。かさばったダウンアウターやヤンキー風サングラスも古臭くて垢抜けない。エフォートレス傾向の真逆を行く気張り感マックスの力みっぷり。どこかサブカルチャーのにおいも漂います。前回と同じく、モデルたちのいきがった「ドヤ顔」も前のめり感を増幅。素敵に突っ込みどころ満載の暴走ぶりでした。
親子デュオの「RYOTA MURAKAMI（リョウタ ムラカミ）」は「街角のブティック」をテーマに選び、ハンドニットを主体とした、ヴィンテージ風のルックを並べました。花のモチーフもやや色あせたようで、ノスタルジーを呼び覚まします。ニットは結び目をこしらえて起伏を生みました。顔には花嫁のヴェールっぽくチュールをかぶせています。片腕だけのロンググローブや、毒っ気を帯びたアップリケなども、不思議な落ち着きの悪さを醸し出していました。
フィナーレを飾ったのは青木明子氏の「AKIKOAOKI（アキコアオキ）」。ビッグシルエットにうっすらとミリタリームードをかぶせ、フェミニンとユーティリティーを響き合わせています。チェック柄を多用して、落ち着きをもたらしつつも、レーステープを不規則に走らせるといったトリッキーなディテールも忍び込ませました。ランジェリーやネグリジェ風の風情も寄り添わせて表情を深くしています。
マーケットとしっかり向き合う態度が強まってきた近年の東コレでは、静かな反骨をはらんだ「東京ニューエイジ」の踏み込んだクリエーションは意味を増しているように見えます。東京のストリートカルチャーやサブカル風味は世界的にも評価が高まっていて、彼らの発信する「東京ニューモード」は東コレのフレッシュなエンジンともなっていきそうです。
“Mercedes Benz fashion week Tokyo 2016-17 A/W” TOKYO NEW AGE
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