亡くなったブライダルデザイナー、桂由美さんの追悼ファッションショー(偲ぶ会)「Yumi -celebration of life-」が2024年8月9日、東京・日比谷の「帝国ホテル 東京」の「孔雀の間」で開催されました。
「ユミ カツラ(Yumi Katsura)」ブランドを立ち上げ、日本に「ブライダル文化」を広めた功績は先例のない、特別なものです。2024年4月に94歳で急逝するまで、現役のクリエイティブディレクターとして日本のブライダルファッションを牽引し続けました。
生前の桂さんは「お葬式なんていらないから、その代わりにショーをしてほしい」と望んでいたそうです。その願いを実現した追悼ファッションショーです。華道家の假屋崎省吾氏、歌手の秋川雅史氏が参加。故人の美意識や幅広い親交を示すかのような演出となりました。
1時間半にわたったファッションショーには100着のアーカイブルックが選ばれ、冨永愛さんがファーストルックでランウェイを飾りました。この日の特別なルックを準備したのは、新生「Yumi Katsura」のクリエイティブチームとして始動することになった藤原綾子、森永幸徳、飯野恵子の3氏。レジェンドモデルたちがランウェイを歩きました。
最初に3氏がステージで想いを語りました。冨永さんはファーストルックのほかに3回登場し、合計4ルックを披露。圧巻のウォーキングで、デザイナーへのリスペクトを示しました。
多彩な100着を通して、桂さんのクリエーションを表現しています。伝説的な「ユミライン」をはじめ、ウエディングパーティ、クチュールウエディング、アニバーサリーウエディング、ラグジュアリークチュール、スタイリッシュジャパン、ジャパネスクなどのラインが披露されました。
ユミラインは桂さんの成功を決定づけた作品です。ニューヨークで初公開された際、婚礼和装の「おひきずり」をヒントにした独創的なシルエットが絶賛され、ユミラインと名付けられました。
ウエディングパーティはブライダルならではの高揚感を盛り上げつつ、エレガンスを薫らせます。世界中から高級素材を集めたクチュールウエディングは圧倒的な服飾美の世界です。アニバーサリーウエディングのシーでは結婚4年目、15年目、25年目、30年目、50年目と、それぞれの節目に応じたモデルが登場。長いライフステージを共に歩むカップルを応援するハートウォーミングな雰囲気でした。
ドレスのイメージが強い桂さんですが、実は和装の提案にも熱心でした。今回も和装業界に新風を吹き込んだスタイリッシュジャパンを披露。和洋が融け合ったジャパネスクはモダンで革新的。日本文化への敬意と理解を印象付けました。
ショーの途中では桂さんの映像が流れ、お考えや生き方にあらためて触れる機会となりました。中でも心に残ったのは、「愛と美と夢。この3つを失わないように生きてきました。何でもいい、ひとつでも愛を持っていたら人間は強くなれる。何でもいい、何か美しいものを見る、持つと心が豊かになる。苦しいことつらいことを忘れられるよう、夢を持って、夢と一緒に生きる、ハッピーランドをつくりたいと思っている」という言葉。フィナーレの後には桂さんの3D映像が映し出され、生前のお姿を思い起こさせました。
ショー会場の外では桂さんが残した言葉がたくさん飾られていました。どれも心に響く言葉でした。
「花婿も主役!結婚式は二人が輝いてこそ」
「式は厳粛に披露宴は楽しく」
「恋をするように仕事をする」
「日本の美を忘れないでほしい。そう呼びかけることも私の使命」
「行き詰まったら自分で道をつくればいい」
「豪華な宝石よりも自分の夢で輝きたい」
「熱意は人を動かす、想いは通じる」
「自分を磨くとはセンスを磨くこと」
「二者択一を迫られたときは利益よりも名誉を取りなさい」
人生や仕事の教えとして大事にしたくなる名言ぞろいです。言葉のそれぞれから桂さん独自の美意識と自意識が読み取れます。日本における女性のビジネス成功者の草分け的な存在ともなった桂さんらしい、意志の強さを感じさせる言葉も印象的でした。
100点を通じて桂さんの表現力や情熱、人柄が伝わってくるかのような構成は、天国から見守ってくださっていた桂さんからも「満点」をもらえたはず。2025年に控えるブランド60周年に向けて、「ユミ カツラ(Yumi Katsura)」ブランドが偉大な歴史を受け継いでいくことを示す感動的なショーでした。
Yumi Katsura
https://www.yumikatsura.com/