制服(ユニフォーム)とファッション~ニューヨークFITの制服展「Uniformity」リポート

制服(ユニフォーム)とファッション~ニューヨークFITの制服展「Uniformity」リポート

制服(ユニフォーム)とファッション~ニューヨークFITの制服展「Uniformity」リポート

ニューヨークにあるファッション工科大学「FIT」の博物館「The Museum at FIT」では興味深い展覧会が常に企画されていて、業界関係者の関心を集めています。2016年5月20日~11月19日の期間は「Uniformity」をテーマにした企画展があり、NYコレクション取材の合間に足を運ぶ機会がありました。世界の様々な制服を集めていますが、本展では単にたくさんの制服を並べるだけではなく、英語本来の意味である「統一」が持つ、ファッションクリエーションやアパレルビジネスにおける意義にも光を当てています。

 

制服(ユニフォーム)とファッション~ニューヨークFITの制服展「Uniformity」リポート

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制服(ユニフォーム)とファッション~ニューヨークFITの制服展「Uniformity」リポート

制服の典型例は軍服でしょう。近年はミリタリーのブームが続いていて、ファッションとしての再評価が進んでいます。職場や学校での制服も身近な存在です。エアラインの客室乗務員が着る制服には各社のカラーが表れています。スポーツもユニフォームでチームの団結や個性を主張しています。見ていくと、制服は見られることを意識して何らかの意図やメッセージを発信しているツールと考えることができます。反対に、着る側にとっては仕事のしやすさに加え、仲間意識や使命感を共有する道具ともなっているわけです。本展ではそうした制服の機能や成り立ちを歴史的アーカイブから学ぶことができます。

モードの世界では、自由な創作が前提になるはずのファッション表現と、自由を規制する制服は相反する立場と言えるでしょう。でも、あえてモードのクリエーションに制服を持ち込むと、かえってその堅苦しさやきまじめ感がずれや摩擦を起こして、着姿に深みが生まれます。本展ではそういったモードへの落とし込み、制服の再解釈にフォーカスしています。一定の型にはまりがちな制服に着想を得て、表現者がどのような創作を試みたかが分かります。米国海軍の将校服、昔のエアライン制服、アイビーリーグのジャケット、ハンバーガー店「マクドナルド」の店員ウエアなどが幅広く集められました。

男性的なイメージの強かったミリタリーをウィメンズファッションに持ち込んだのは、マニッシュな雰囲気や硬質なムードといった、女性向けでは珍しい「男っぽさ」を借用することによって、新たな女性像を引き出すという狙いが大きかったようです。本展ではミリタリーの装いを翻案した「コム デ ギャルソン(Comme des Garcons)」のスーツも披露されています。

 

制服(ユニフォーム)とファッション~ニューヨークFITの制服展「Uniformity」リポート

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制服(ユニフォーム)とファッション~ニューヨークFITの制服展「Uniformity」リポート

スクールガールの着姿は純真、初々しさなどを象徴するアイコンとしてしばしばモードの世界でもイメージソースになっています。本展では女子高校生の制服をモチーフにしつつ、大胆な解体を試みた地元NYの「トム ブラウン(Thom Browne.)」の作品が紹介されていました。1960~70年代の伝説的なデザイナー、ルディ・ガーンライヒ(Rudi Gernreich)が「Japanese Schoolgirl」をモチーフにしたという作品は意外感があります。アイビーリーグの校章エンブレム付きジャケットも実質的な制服として取り上げられていました。

セーラー服に代表される船乗りルック。ファッションの世界ではいわゆるマリンルック、紺×白ボーダー柄として定着しています。水兵から女子学生へと、「制服から制服に」として移植されたセーラー服という珍しいケースもあります。本展にはマリンルックを広めた立役者の1人であるジャン・ポール・ゴルチエ氏の作品を展示。ボーダー柄を生かした例として日本の「Sacai(サカイ)」も選ばれています。

 

制服(ユニフォーム)とファッション~ニューヨークFITの制服展「Uniformity」リポート

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全体に感じられたのは、時代の変化に伴い、制服をハイファッションや普段着に取り込もうとする動きが加速した点です。日本でも多くの学校や金融機関で制服が廃止されていったように、制服と私服の境界線があいまいになっていき、制服的ニュアンスを私服に生かすアレンジが試しやすくなっていきました。日本では「なんちゃって制服」という、制服ライクな私服まで出現し、それがアジア諸国で「クールジャパン」と評価される現象も起きています。

制服の面白さは、それぞれが担う役目や機能に由来する制約の中でのデザインがかえって独創性を引き出しているところにもあります。ウィットに富んだ作風で知られる鬼才ジェレミー・スコット氏が「モスキーノ(MOSCHINO)」で「マクドナルド」のモチーフをランウェイルックに写し込んだように、企業やビジネスのイメージを茶目っ気たっぷりにクリエーションに生かすチャレンジも広がりつつあります。場所や状況にしばられない「シーンフリー」のスタイリングが一段と浸透する中、表現者のチャレンジ精神を追い風に、「制服」の居場所はさらに広がっていきそうです。

The Museum at FIT /  Exhibitions /  Uniformity
Fashion & Textile History Gallery
May 20 – November 19, 2016
http://www.fitnyc.edu/museum/exhibitions/uniformity.php

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