第36回(2018年度)毎日ファッション大賞の授賞式開催(今年も推薦委員を務めました)

 第36回(2018年度)毎日ファッション大賞の授賞式開催(今年も推薦委員を務めました)

2018年度(第36回)の毎日ファッション大賞の授賞式が11月22日に開催されました。これまでに引き続き(2014年~)、今年も推薦委員を務めた私も参加しました。東京・恵比寿のEBiS303で開催された授賞式では、受賞したみなさんそれぞれがよろこびの声や、今後の抱負を語ってくれました。

 

第36回(2018年度)毎日ファッション大賞の授賞式開催(今年も推薦委員を務めました)

第36回(2018年度)毎日ファッション大賞の授賞式開催(今年も推薦委員を務めました)

第36回(2018年度)毎日ファッション大賞の授賞式開催(今年も推薦委員を務めました)

新人賞・資生堂奨励賞を受賞したのは、「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」の青木明子デザイナーです。新鋭の中では頭ひとつ抜け出た感じがあり、納得感の高い受賞となりました。今回の授賞式では2019年春夏コレクションのランウェイショーが披露されました。

 

第36回(2018年度)毎日ファッション大賞の授賞式開催(今年も推薦委員を務めました)囲み取材の写真
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「装うことの文化的なところを発信していきたい」という趣旨のコメントがあり、ランウェイショーでも目先のトレンドを追わない、独自のクリエーションを掘り下げるスタンスがうかがえます。早くもパリをはじめとする欧米ファッションウイークへの参加を期待する声も上がっていますが、ご本人は「海外も視野には入れていきながら、まずは日本でしっかり発表していきたい」と、着実に足場を固める気持ちを語っていました。

ファッション業界への貢献が大きかった人に贈られる鯨岡阿美子賞に選ばれたのは、アートディレクターの仲條正義氏でした。仲條氏は資生堂の企業文化誌『花椿』で2011年まで40年以上にわたってアートディレクターを務めてきました。

『花椿』はファッション関連の情報がまだあまり多くなかった時代から、モードとメークの本質に触れる誌面を企画。今回の大賞を受賞した、「トーガ(TOGA)」の古田泰子デザイナーも「『花椿』を読んで、ファッションに憧れを抱いた」と語っています。仲條氏は「『花椿』が体質に合っていた」と、謙遜気味にコメントしていました。

 

第36回(2018年度)毎日ファッション大賞の授賞式開催(今年も推薦委員を務めました)囲み取材の写真
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話題賞にはファッション通販サイト「ゾゾタウン」で知られる企業「ゾゾ」の「ゾゾスーツ(ZOZOSUIT)」が選ばれました。話題賞にふさわしく、独創的な採寸方法は広く関心を集めました。

授賞式に登場したのは、前澤友作社長ではなく、開発を担当したという伊藤正裕・ゾゾ取締役。実際に「ゾゾ」でオーダーした細身スーツを着ての登壇となりました。「体温計と同じように、一家に一台、ゾゾスーツの採寸キットがあるような状況を目指していきます」と、さらなる普及に向けた熱意を見せていました。

 

第36回(2018年度)毎日ファッション大賞の授賞式開催(今年も推薦委員を務めました)囲み取材の写真
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大賞古田氏は2003年に新人賞を受賞したのに加え、09年には最初の大賞を受賞していて、今回は2度目の大賞受賞となりました。2度以上の大賞受賞者は川久保玲、三宅一生、山本耀司、高橋盾、阿部千登勢といった大御所、ビッグネームぞろい。古田氏はこうした数少ない複数回受賞者の仲間入りを果たしました。

前回の09年から、約10年を経ての受賞は古田氏の着実なキャリアを印象づけます。前回の受賞は、ちょうど発表の場を東京コレクションからパリへ移した時期にあたります。その後、さらにロンドン・ファッションウィークに舞台を移し、今に至っています。

デビューから約20周年の節目を迎え、クリエーションが一段と成熟してきました。古田氏も節目のタイミングでの受賞に感慨深げ。チームワークへの感謝を述べました。

授賞式でのメッセージで特に興味深かったのは、話題賞を受賞したゾゾスーツに関連して「(自分のクリエーションとは)対極の位置にある」と述べたところです。「便利な時代になったけれど、人間は今も、朝起きて裸では過ごせない。服を選んで着るという営みは確かにあり、ファッションを信じている」という趣旨の言葉にも、「着る道具」に終わらないファッションへの情熱がうかがえました。

クリエーションの方向性として「強くありたい」という言葉も印象に残りました。ロンドンを発表の場に選んでいる理由に関しても、「ヨーロッパで最も早いタイミングで発表できるから」と説明。インターネットで新コレクションの情報が出ていく前に開催されるロンドンでの発表は、情報に左右されない点で意味があるといいます。

ものづくりとの向き合い方ではフラットな態度を重んじていると語りました。日本人だからといって、日本の素材を使わなければといったルールにとらわれているわけではないそうです。インドの刺繍、ヨーロッパの生地なども、たまたまテーマと合えば使うといったスタンスです。

ただ、身近な生地屋さんで素敵な素材に出会うことが多いので、日本の素材を使うことがあるものの、必ず日本素材を使わないといけないとは考えていないといいます。ランウェイショーの形式にも特段、こだわっていないそうです。

古田氏の言葉を聞いて、あらためて感じたのは、芯がしっかりしていて、流行に左右されないクリエイターマインドです。20年の積み重ねで、さらに深みを増した「トーガ」。20周年を迎えたコレクションをロンドンファッションウィークで取材した際にも堂々たる提案にうならされました。パリに向かう日本人デザイナーが多い中、とがったブランドが多いロンドンでポジションを確立している点でも、古田氏の歩みは大賞にふさわしい独創性を一段と深めていると感じられました。

第36回(2018年度)毎日ファッション大賞の授賞式開催(今年も推薦委員を務めました)

第36回「毎日ファッション大賞」
http://macs.mainichi.co.jp/fashion/

第35回(2017年度)毎日ファッション大賞の授賞式 深まるジャパンクリエーションを実感 (推薦委員を務めました)

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