「beautiful people(ビューティフルピープル)」はパリ・ファッションウィークに参加し、2021年春夏コレクションを、デジタルショーを配信する形式で発表しました。
来場者を迎えてのリアルショーではなく、作り込みが可能な映像形式である点を生かして、ウイルスに閉じ込められた状況をイメージさせるシチュエーションを演出。椅子やソファに服が融け合うかのようなファンタジーを描き出しています。「着る毛布」のドレス版とも言えそうな、枕やクッションにも似たふっくら形状のユーモラスな服を提案しました。
不安の時代に、あえて朗らかなボリュームを用意しました。丸みを帯びたシルエットの担い手は細かいマイクロビーズ。クッションの詰め物に使うような小粒ビーズをキーマテリアルに迎えて、量感を弾ませています。招待状も手袋状にビーズを詰めた枕のような物体でした。
袖のふくらみや腰周りの張り出しなど、あちこちにビーズを詰め込んで、ファニーでボリューミーなラウンドをこしらえています。流動性に富むビーズのおかげで、モデルの仕草に合わせて、フォルムもトランスフォーム(変形)。のどかな表情が多彩に変化します。
表も裏でもない空間や領域を意味する「Side-C」のコンセプトを、ビーズが拡張した隙間という形で目立たせました。ステイホームの間に思い浮かんだという「もしも服が住まいになったら」という奇想が出発点。実際にソファと一体化した服も登場しています。
ウィットフルな仕掛けでありながら、全体のテイストはクラシカル。ヘッドピースやロンググローブにも貴婦人感が漂います。あふれるほどの量感は、身を守る「プロテクション」の気分も帯びています。「Christian Dior(クリスチャン・ディオール)」の歴史的傑作「ニュールック」へのオマージュも披露。
家具や内装などの「日常」に由来するだけに、どこか人なつこく親しげなたたずまいは、今の時代に求められる「安心」や「くつろぎ」に誘うかのよう。ニューノーマル下でもいたずらっぽさを忘れない熊切秀典デザイナーのポジティブなクリエーションに「希望」をもらいました。
#beautifulpeople21ss