東京都現代美術館(MOT、東京・木場)は毎年、現代の世相を映すグループ展「MOTアニュアル」を開いています。2005年のテーマは「愛と孤独、そして笑い」。10名の女性現代アーティストが思い思いの手法で「今を生きる女性」を表現していました。
個人的に衝撃を受けたのは、嶋田美子氏の作品群です。彼女の作品はアプローチからして斬新。観客が参加して作品を作り上げるインスタレーションです。まず、観客が家族の秘密を紙に書いてポストに入れます。アーティストが数日後、その秘密を書き写して引き出しに収めて、観客がその引き出しをのぞいて読むという仕組みです。
他人の部屋の引き出しをこっそり開けるような気分がして、引き出しを開く瞬間はドキドキです。他人の秘密をのぞき見してみると、そこにはかなりディープで恐ろしく、胸がむかむかするくらいの秘密が。
人間には誰にでも人に言えない秘密があるものです。「永遠に胸の奥におさめておいた方がいい秘密もあるものだ」と、今さらながらに実感した展示でした。
写真家の澤田知子氏の作品はあまりの迫力とすごみで笑ってしまいました。「自動証明写真機で撮った400人」というこのシリーズは、メーク、ヘアスタイル、服装、表情を変えながら、証明写真ボックスで400人分の自分を撮ったセルフポートレートです。
コンプレックスとないまぜになっている、女性なら誰もが持っている多面性、変身願望みたいなものを感じました。正直言って、彼女はまん丸顔で目が細くて、ボディもふくよか。男性の考える「美人」とはかなりずれています。
ビジュアル的にインパクトのある彼女ならではの表情には、不気味さとコミカルさが漂っていて、思わず「ぷっ」と吹き出してしまいました。ここまでできるなんて、同じ女性としてあっぱれ!。少しうらやましい気持ちすらしました。
それぞれの写真の外見は異なりますが、本当は同じ一人の人間です。いかに人が第一印象(外見・容姿)で他人を判断してしまうか、ということが分かります。逆に言えば、第一印象がいかに大事かということです。その第一印象を左右する髪型、メーク、そしてファッションがいかに重要かということもあらためて教えられた気がしました。