おしゃれをテーマに据えたミュージアムとしては、パリや神戸市のファッション美術館が有名ですが、カナダのトロント市には世界でも数少ない、靴専門の博物館「Bata Shoe Museum(バータ靴博物館)」があります。2019年1月初めまでは特別展「MANOLO BLAHNIK THE ART OF SHOES」が開催されています。先日、カナダ・トロントに訪問してきたので、博物館とマノロ展をリポートします。
「Bata」という名前を見て、気づいた人もいると思いますが、この博物館を創設したのは、世界的な靴ブランド「Bata(バータ) Shoes」の一族です。正確に言えば、経営者の妻だったソニア・バータさんが創設者。夫と一緒に世界を旅するうちに、各地で買い集めた靴が大きなコレクションに育ち、その収集品をもとに博物館を開いたそうです。Bataは以前、トロント市内に本社を構えていた縁で、この地が選ばれました。
◆靴のヒストリーを一望
展示スペースは地下1階から地上3階までの4フロアにわたっています。館内には1万3000足を超える靴が収蔵されていて、靴がどんな歴史を経て現代に至っているかを知ることができます。原始時代や古代エジプトなど、はるか昔の靴はなかなか目にする機会がありません。著名人の愛用シューズも集められていて、マリリン・モンローやジョン・レノンが履いていた靴も見ることができます。ファッションアイテムとしても人気の盛り上がるスニーカーも歴史的な逸品が展示されています。
◆「マノロ ブラニク」展の美に浸る
靴の巨匠、マノロ・ブラニク氏の大がかりな回顧展は最上階の展示フロア全体を使って開かれていました。米国テレビドラマ『Sex and the City』では主人公のキャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)がマノロ作の靴を買い込みすぎて、破産しかけるエピソードまである、シューズ界の憧れブランドです。
45年を超える長いキャリアを彩ってきた名品が並んだ様子は、思わずうっとりしてしまいます。ミラノやマドリッドなどで開催されてきた巡回展です。映画『マリー・アントワネット』に登場したシューズも展示されていました。たくさんの作品をまとめて見渡すと、作風や美意識を感じ取りやすくなります。200足もの傑作シューズは、靴をアートの高みに押し上げたマノロの業績をあらためて証明しています。
2019年1月6日まで開催されているので、靴に興味のある人はこの機会にカナダ・トロントを訪れてみてはいかがでしょうか。
◆大地との接点である「靴」を大切に考えるカナダ人意識
カナダは靴文化と縁の深い国です。「SOREL(ソレル)」や「ALDO(アルド)」といった、世界的に知られた靴ブランドもあります。トロントをはじめ、バンクーバーやモントリオールなどの大都市も割と都心と自然が近く、市民の間ではスポーツも盛ん。バンクーバーとモントリオール、カルガリーではオリンピックも開催されています。
アクティブに過ごす風土があるカナダでは、靴は大切なパートナー。百貨店やセレクトショップでも靴売り場が充実しています。「ソレル」や「アルド」に感じられるのは、実用性やリーズナブル価格、履きやすさといった、消費者にとってありがたい特長です。今回のトロント訪問ではオーガニック食品の浸透や、キャッシュレス化の広がりも実感しました。こういったリアルな健康志向、使い勝手重視の傾向はカナダ社会の特質と言えるかもしれません。
2015年にニューヨークのブルックリンミュージアムで開催された展覧会「The Rise of Sneaker Culture(スニーカー文化の台頭)」は大きな関心を集めました。実はこの展覧会も「Bata Shoe Museum」から始まった企画でした。靴をカルチャーと位置付ける意識にも、最も身近な大地との接点である「靴」を大切に考えるカナダ人意識が感じ取れるような気がしました。
Bata Shoe Museum
http://www.batashoemuseum.ca/
トロント観光局(Tourism Toronto)
http://www.seetorontonow.com
※先日の「カナダ・トロント」プレスツアーの観光リポートの【前編】と【後編】も合わせてご覧ください。
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