「アルカンターラ®×ローマ21世紀芸術国立美術館」のコラボレーション・リポート

Alcantara®（アルカンターラ®）の魅力に迫るリポート第２回は、アートとの関係がテーマです。（ローマの工場見学を紹介したリポート第１回はこちらをご覧ください。）

ファッションの世界では日に日に、アートとの関係が親密になっています。アート作品を服やバッグにモチーフ（柄）として生かしたり、アーティストとコラボレーションしたりといったアプローチが広がってきました。

アートを支援する動きも盛んです。アルカンターラ社は以前からアート支援に積極的で、ローマにある「MAXXI 21世紀芸術国立美術館」を舞台に、数々のアート展覧会をサポートしてきました。私が取材した展覧会では、国際的なデザインスタジオ「Formafantasma（フォルマファンタズマ）」とのコラボレーション。加工しやすいアルカンターラ®の特長を生かしたアート作品が展示されました。

2019年３月15日～４月７日に同美術館で開催された美術展では、フォルマファンタズマがイタリアの建築家、ピエール・ルイージ・ネルヴィ（Pier Luigi Nervi、1891～1979年）に焦点を当てました。ローマ大学の工学教授であったネルヴィは第２次世界大戦後、コンクリートを研究の対象にしました。機能的な素材であり、様々な用途に向いていて、他の材料とも組み合わせやすい点において、コンクリートはアルカンターラとも共通する特徴を備えています。

アルカンターラ®とコンクリートに共通する要素を「構造」ととらえ、汎用性や多目的性なども作品に写し込んでいます。フォルマファンタズマの２人にオープニングパーティの席で話を聞いたところ、「アルカンターラ®の素材はとても使いやすい。自由自在に使いこなせるのが魅力」と、アート素材としてのアルカンターラ®を高く評価していました。

フォルマファンタズマはともにイタリア出身のアンドレア・トリマルキ（Andrea Trimarchi、1983年生まれ）とシモーネ・ファレジン（Simone Farresin、1980年生まれ）のデザイナーデュオが立ち上げたデザインスタジオです。世界のデザインシーンをリードする存在として脚光を浴びています。活動の拠点はアムステルダムに置いています。

クラフトと産業をつなぎ、歴史と現代を交差させるアプローチを得意としています。ニューヨーク近代美術館（MoMA）をはじめとする、有力美術館で永久所蔵されていることからも、彼らの評価がうかがえます。今回の展覧会では、ネルヴィの建築アーカイブ資料を写し込む「キャンバス」として、アルカンターラ®素材を活用。彼ららしい歴史と文化を重層的に扱う手法が存分に生かされていました。

サステナビリティを創作の柱に据えているのは、彼らの特質と言えるでしょう。サステナビリティを重んじているアルカンターラ社とのコラボは方向性がしっかりマッチしていると見えます。ゴシック様式の建築写真と、鉄パイプの骨組み、そして、ハイテク素材のアルカンターラが同じインスタレーションの中で響き合い、時を超えて続くという、サステナビリティの思想を印象づけていました。

著名な建築家、ザハ・ハディッドがデザインを手がけた美術館は、建築家・ネルヴィへのオマージュを、アルカンターラ®の素材を使って表現した今回の展覧会にぴったりの会場と言えます。『StudioVisit ― 進化するピエール・ルイジ・ネルヴィ』という展覧会タイトルの通り、ネルヴィの着想をさらに発展させたような近未来ムードを漂わせるインスタレーションです。

コンクリートや鉄パイプなど、建設現場を思わせる素材を用いて、クールな印象を醸し出しています。古今の有名建築物の写真や絵を組み込んで、建築家へのリスペクトも感じさせます。モノクロ写真が静かなムードに整え、回廊風のインスタレーションが重層的な構造に、見る者を引き込みます。アルカンターラ®ならではの上質で穏やかな素材感が作品全体に落ち着きをもたらしているように見えました。

最終回となる第３回はアンドレア・ボラーニョ会長のインタビューと、サステナビリティへの取り組みを紹介します。