ソフィア・コッポラ監督の映画『プリシラ』公開 プレスリーの恋人・妻の視点から描く出会いと別れ

ソフィア・コッポラ監督の映画『プリシラ』公開

 

ソフィア・コッポラ監督の映画『プリシラ』が公開されます(4月12日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー)。エルヴィス・プレスリーと、妻だったプリシラのなれそめから別れまでをつづった伝記映画です。

プリシラに関しては、実像がほとんど知られておらず、1985年に出版された回想録で初めて詳細が明らかになりました。この映画も回想録がベースになっていますプレスリーとの間に生まれた娘、リサ・マリー・プレスリーがマイケル・ジャクソンと結婚したこともあって、ゴシップ的に報じられることもありましたが、この映画は誤解の多かったプリシラ像に現実感を与えているようです。

この映画ではプレスリーとの出会いから結婚までの、これまであまり語られることのなかった「恋人時代」に光を当てています。プリシラとプレスリーの関係がどのように深まり、壊れていったのか。ロックスターのカップルに起きた出来事を、2人に寄り添うようなまなざしで照らし出していきます。

 

ソフィア・コッポラ監督の映画『プリシラ』公開

 

最初に驚かされるのは、プレスリーと初めて出会った当時のプリシラがまだ14歳だったことです。日本でいえば中学生にあたる年頃。プリシラ役を演じたケイリー・スピーニーの初々しい演技が光ります。ベネチア国際映画祭では最優秀女優賞を受賞しました。

 

ソフィア・コッポラ監督の映画『プリシラ』公開

ソフィア・コッポラ監督の映画『プリシラ』公開

 

既にスター歌手だったプレスリーとの関係には、危ういムードが予感されますが、劇中のプレスリーは意外なほどに紳士的な振る舞いを見せます。大人の関係を求めるプリシラに対して、自制を促し、手を出そうとしないプレスリーはいわゆる「スター」のイメージを裏切る、ジェントルマン的な態度です。

 

ソフィア・コッポラ監督の映画『プリシラ』公開

 

なかなか進展しない関係にもどかしい思いを募らせる、若き日のプリシラ。しかし、プレスリーがさらに大物になり、生活を共にするようになっていくのに連れて、2人の関係は恋人、夫婦へと徐々に発展していきます。

そうした間柄や立場の変化を印象付けるのは、プリシラのまとう衣装の変化です。当初はお嬢様ライクでガーリーな服を着ていたプリシラですが、プレスリーが勢いづかせたロックンロール文化を映して、徐々に大胆な装いにスイッチ。年齢を重ねるに従って、ルックも成熟を加えていきます。

今回の撮影では「シャネル」や「ヴァレンティノ」といったトップブランドが衣装を提供。シンデレラストーリーにリアリティーを添えています。コッポラ監督は過去の『ロスト・イン・トランスレーション』『マリー・アントワネット』などでも衣装にストーリーを語らせていて、ファッションを効果的に演出に生かすテクニックで有名です。

 

ソフィア・コッポラ監督の映画『プリシラ』公開

 

タイトルが示す通り、プリシラの視点から描いているところがこれまでの「プレスリー主語」の物語との際立った違いです。彼女が抱え込んだ孤独感やむなしさを掘り下げ、徐々にプレスリーが独善的な態度を強めて行く変化も描き出しました。夢のような恋をかなえ、やがて幻滅を深めて、憧れのロックスターから去るプリシラ。傷ついた女性が自分を取り戻していく再生の物語でもあるようです。

 

ソフィア・コッポラ監督の映画『プリシラ』公開

ソフィア・コッポラ監督の映画『プリシラ』公開

 

髪型やメイクもプリシラの内面を映し出します。最初の頃は清楚な「箱入り娘」風の姿でしたが、やがて盛ったヘアや濃いアイメイクなど、プレスリー好みの姿に変身。恋人からの強い影響で、内面も外見も変わっていく彼女のありようを、ファッションと共に描き出しています。

コッポラ監督がプリシラ本人と対話を重ね、理解を深めたことがストーリーに奥行きをもたらしました。女性監督が撮ったこの映画ではプレスリーがはっきりと「脇役」に位置付けられています。プリシラが感じた不安や焦り、混乱を追体験することによって、観客は彼女が選んだ別れと再生の意味を深く知ることができそうです。

 

ソフィア・コッポラ監督の映画『プリシラ』公開

 

作品タイトル:『プリシラ』
公開表記: 2024年4月12日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
配給:ギャガ
コピーライト:場面写真/©The Apartment S.r.l All Rights Reserved 2023

https://gaga.ne.jp/priscilla/

Go to top