トロント市内にはアート巡りやご当地フード、ショッピングなどの楽しめるスポットがたくさんあります。「前編」のアクティブな観光名所に続き、「後編」では街歩きが楽しくなるようなスポットを中心にリポートしていきます。
◆タイムスリップ気分を味わえる、おしゃれエリア「ディスティラリー地区」
ワインを醸造するワイナリーに対して、ウイスキーを蒸溜する施設をディスティラリーと呼びます。トロントの観光名所「ディスティラリー地区(The Distillery Historic District)」はその名の通り、かつてウイスキー工場だった場所です。跡地を再開発して、今ではトロント有数のおしゃれエリアに様変わりしました。
雑貨ショップやギャラリー、レストラン、カフェなどが集まっています。1年を通じて多彩なイベントが催されているので、にぎわいが絶えません。れんが造りの建物が残されていて、ノスタルジックなたたずまい。19世紀のヴィクトリア朝時代を思わせる雰囲気があり、あちこちに写真映えするフォトスポットが見つかります。エリア内は歩行者専用だから、のんびり過ごせます。
ギャラリーを巡って、カフェで一休みといった過ごし方がおすすめ。もともとウイスキー工場だったからか、北米で初という日本酒の醸造所「泉酒造」も足を運びたいスポット。有料で試飲も申し込めます。全体にレトロなムードが漂っていて、ちょっとしたタイムスリップ気分も味わえます。
◆アート意識の高さに感心 美術館はもちろん、街中にもアート
アートを楽しむなら、まずオンタリオ美術館(Art Gallery of Ontario)へ。「建築界のノーベル賞」と呼ばれるプリツカー賞を受賞している、地元トロント出身の偉大な建築家、フランク・ゲーリー(Frank Gehry)氏が増築を手掛けた建物は、これを見るためにトロントを訪れる人も少なくないという名建築です。
印象派や現代アートなども幅広く収蔵・展示していますが、やはり地元のカナディアンアートが一番の見どころ。世界一の規模を誇るというのですから、日本ではなかなか見る機会の多くないカナディアンアートに触れる、絶好のチャンスです。
美術館の次は博物館へどうぞ。目指す先は「ロイヤル・オンタリオ博物館(Royal Ontario Museum)」。
ロイヤル・オンタリオ博物館には600万点を超えるコレクションがあり、展示は1日で回りきれないほど充実しています。とりわけ、恐竜と中国美術のコレクションは厚みがあって、北米の博物館の中でもひときわ評価が高い理由に納得できます。
このようにご紹介が続くと、何だかミュージアムばかり訪ねているように思えるかもしれませんが、実はこれが欧米流の観光セオリーなのです。彼らは旅先の文化や歴史を深く知りたがる傾向にあり、まず、ミュージアムへ向かうのです。旅の深みを増すうえで、真似したくなるテクニックです。
世界でも珍しいテーマ特化型ミュージアムと言えそうなのは、靴専門の博物館「バータ靴博物館(Bata Shoe Museum)」です。4フロアすべてで靴の貴重なコレクションを展示。企画展もあり、私が訪れた今回のタイミングではManolo Blahnik(マノロ・ブラニク)氏のクリエーションを振り返る特別展が開催されていました。このマノロ・ブラニク展に関しては「アパログ」で詳しくリポートしています。
トロントを訪ねて感じたのは、アート意識の高さです。とにかく街のあちらこちらにアート作品があります。しかも、これみよがしではなく、風景と融け合うかのような感じで作品が置かれていて、道を歩いているだけでも、自然とアートウォッチングが楽しめてしまうようなところがあります。街のそこかしこでストリートアート作品に巡り会えるのです。家の壁やビルの壁面をアーティストのキャンバスとして提供する態度にも、トロント市民のアートフレンドリーな意識がうかがえます。
オーガニックな暮らし方を好むトロント市民は自転車が大好き。公共交通機関はきちんと整備されているのですが、街中では自転車で移動する市民を大勢、見かけました。身近な足である自転車だけに、乗っていない間の置き方にも愛情が感じられます。単に止めておくだけではなく、花で飾ったり、玄関先の景色になじませたり。自転車もストリートアートの一部になっています。
街で見かけるアート作品のテーマや表現手法は様々なのですが、結構、多いと感じるのは、水や自然を題材にした作品です。魚や船などもモチーフになっていて、水とのかかわりが深い地域性を感じさせます。哲学的なムードや、スリリングな切り口の作品も珍しくなくて、ギャラリー巡りのような気分で街を歩き回れます。
街を歩いているだけでも、あちこちで写真を撮りたくなるフォトジェニックな街はインスタ映えも文句なし。SNSへの写真アップが楽しくなりそうです。
◆「クイーンストリートウエスト」でこだわりのショップ巡り
ダウンタウンにあるクイーンストリートウエスト(Queen Street West )は、散策しながらのショッピングを楽しみたいときに向かいたいエリアです。いわゆるおしゃれエリアで、気の利いたセレクトショップやアクセサリー店などが集まっています。大規模なチェーン店というよりも、個人営業のこだわり系ショップが多いので、巡り歩く面白さがあります。
近年のホテル業界では世界的にリノベーションがブームです。歴史的な建造物を取り壊さないで、大がかりに手を加え、クラシックな風情を残したまま、モダンに再生するわけです。ニューヨークのエースホテルをはじめとする成功例が相次いでいます。クイーンストリートウエストにある「ドレイクホテル(THE DRAKE HOTEL)」もそうしたリノベーション型の人気ホテルです。
最初のドレイクホテルは1890年にオープンしましたが、2004年以降、リノベーショを経て再スタートしました。全部で19室と、小ぶりの規模ですが、モダンな雰囲気とアートの薫りで人気を博しています。部屋には絵画やオブジェなどのアート作品が配されていて、アートと暮らす感覚に浸れます。地下にはナイトクラブがあり、DJパフォーマンスやバンド演奏で連日、盛り上がっています。
クイーンストリートウエストに本店があり、市内にもう3店舗を構える「ドレイク・ジェネラル・ストア(DRAKE GENERAL STORE)」は外観も品ぞろえもワクワク感の高いショップです。こちらはドレイクホテルの向かいに建つストア。店の自己紹介にある通り、ホテルのギフトショップ、蚤の市、ミュージアムショップなどの性格を兼ね備えたような売り場です。
ファッションアイテムやお土産、アート作品などが素敵なセレクトで紹介されています。カナダやトロントのクリエイターを応援する姿勢を打ち出しているのも、持ち味になっています。つまり、ほかでは手に入りにくいオンリーワンのアイテムと出会いやすいショップです。
ヴィンテージ・古着好きとしては、どこの都市でも必ずヴィンテージショップを訪ねるのですが、トロントにもヴィンテージを扱う店があります。しかもニューヨークやパリより、質の割に値段が安いと感じました。
◆「ケンジントンマーケット」でミックスカルチャーを堪能
トロントには複数のマーケット、ショッピングストリートがありますが、ケンジントンマーケット(Kensington Market)はトロントの移民カルチャーを感じやすいエリアです。アフリカや中南米のエスニックなムードが漂います。カフェやレストラン、雑貨店などが並び、商店街と縁日をミックスしたようなにぎわいが生まれています。「マーケット」の名にふさわしく、生鮮食品や乳製品も売られています。古着店もいっぱいありました。街全体にヒップホップやヒッピーの雰囲気があり、あちこちで寄り道したくなります。
「BREWING(=ビール醸造)」の文字に釣られて立ち寄ったのは、クラフトビールのバー「KENSINGTON BREWING CO.」。こちらは自前でビールを生産しているマイクロブリュワリー(小規模醸造)のようで、生産・貯蔵設備も見ることができました。もちろん、蔵出しのビールは格別の味わいです。
◆「セントローレンスマーケット」でご当地グルメを味わう
「トロント市民の台所」的な存在とされるのが、「セントローレンスマーケット(St. Lawrence Market)」です。旅行のベテランには、旅先で地元らしい市場へ出掛けるのを好む人がいます。リアルな暮らしぶりが分かるからです。食文化に触れる機会にもなります。日本でも東京・築地市場は外国人観光客に人気の観光スポットです。トロントでそれに当たるのはセントローレンスマーケットでしょう。
野菜やフルーツ、精肉、鮮魚などが集まっていて、見ているだけでおなかが空いてきます。デリや軽食スペースがたくさんあり、ランチにも困りません。「市場」という名前でも、ちゃんと屋内にあるから、天気や季節に関係なく立ち寄れます。市場ならではの早朝スタートは、1日を有効に使いたい旅行者にもありがたいところです。
名物店「Carousel Bakery」ではトロント発祥という、ベーコンが入った「ピーミールベーコン・サンド(Peameal Bacon Sandwich)」にトライしました。コーンミールをまぶした分厚いベーコンがバンズに挟まれ、メープルシロップとマスタードを好きなだけかけて食べます。塩味の効いた、脂肪分の少なそうなヘルシーなお肉がジューシーでおいしい。ボリューム満点でしたが、ぺろりと平らげました。
◆オーガニックやナチュラルフードからスキンケアが当たり前
トロントならではと思えるのは、食品に「オーガニック」の文字が多いことです。無農薬や有機栽培の食品を積極的に提案していて、健康意識の高さが感じ取れます。生鮮食品だけではなく、ポテトチップスのような菓子類、スキンケア商品などにも無添加やナチュラル、グルテンフリーといった表示が多く、ケミカルな要素をできるだけ遠ざける「自然体」のライフスタイルがトロント市民からは支持されているようです。
オーガニック志向を象徴する存在と言えるのが、ナチュラルフードの専門スーパー「ビッグキャロット・ナチュラルフードマーケット(The Big Carrot Natural Food Market)」です。こちらで取り扱っている食材はすべてがオーガニックの品。食品だけではなく、雑貨やサプリメント類もオーガニックを貫いています。オーガニックの種類も細かく示されていて、ビーガン(完全な菜食主義者)の人向けの商品も数多く用意されています。
トロントに拠点を構えるスキンケアブランド「DECIEM The Abnormal Beauty Company」はオーガニック志向の製品づくりに特化しています。中身に加えて魅力的なのは、お手頃なプライス。「オーガニック製品=高い」という常識を素敵に裏切る価格設定です。
◆レインボーカラーが象徴する市民意識の高さ
2018年のファッション界でトレンドカラーに浮上してきたのが、LGBTQ+への共感を示すレインボーカラーです。様々な意味で差別のない社会を象徴する色とされていて、この色を掲げることはオープンマインドな態度を示すメッセージともなっています。トロント市内でもレインボーカラーがあちこちに見られ、移民文化に根差した、多様性を重んじる市民意識の高さを印象づけていました。
◆「オーガニック」を心身の両面で実感
過ごして感じたのは、心身の両面で心地よい街だということです。気負いを遠ざけ、健やかに、ナチュラルであろうとする意識は「オーガニック」と呼ぶのが最も近い気がします。大都会にありがちな窮屈さやせわしさを感じにくい半面、大都市らしくない自然とのふれあいや人柄の穏やかさがあって、トロントを移住先に選ぶ人が多い理由が実感できます。
女性にうれしい治安のよさや交通の便利さも、トロント旅をお薦めしたい理由です。旅慣れていない人にも安心で、旅好きの人はたくさんの発見がありそう。日本からは直行便が飛んでいるので、空の旅も楽ちんだから、都会と自然のいいとこ取りが楽しめる街、トロント旅に出掛けてみませんか。
トロント観光局(Tourism Toronto)
http://www.seetorontonow.com
※「カナダ・トロントへの旅 都会と自然が共存 アクティブなのに癒やされる【前編】」も合わせてご覧ください。
https://riemiyata.com/travel/27193/
「シティリビングWeb Tokyo」にもリポートしましたおで、ご覧くださいませ。
↓
【カナダ・トロント旅】身も心もオーガニック! 都会と自然が共存したオアシスへ
https://city.living.jp/?p=984052&preview=1&_ppp=7e193a72a3
~関連記事~
カナダ・トロントで靴専門の博物館を訪問 「MANOLO BLAHNIK(マノロ ブラニク)」展覧会
http://blog.apparel-web.com/theme/trend/author/riemiyata/216fef6e-178e-4ce2-8662-e2a0f51443e5