ファッションデザインコンテスト「roop Award 2025-2026」の最終審査・授賞式が2026年3月22日に開催されました。このコンテストは、大丸松坂屋百貨店が運営するファッションサブスクリプションサービス「AnotherADdress(アナザーアドレス)」によるアップサイクルプロジェクト「roop」が主催。「Rakuten Fashion Week TOKYO 2026 A/W」の関連イベントとして実施されました。
「roop」は2024年8月から始動した衣料循環型のアップサイクルプロジェクトです。生活者から回収された思い入れのある衣類や、レンタルが難しくなった服を素材とし、デザイナーの手によって新たな価値を持つアイテムへと再生。ファッションを楽しむことを前提に、「廃棄を減らす」「寿命を延ばす」「技術や意思を継承する」というテーマを体現しています。
その一環として行われる「roop Award」は、アップサイクルの可能性をクリエイションとして昇華した作品を選出するコンテストです。今回も、素材に宿る記憶やストーリーを丁寧に読み解きながら、新しい価値へと転換する試みが数多く見られました。
モデルが衣装を着用してランウェイを歩き、審査員の投票により各賞が決定します。審査項目は「デザイン性(素材のデザイン解釈)」「コンセプト(素材のストーリー解釈)」「オリジナリティ(独創性)」「着用における完成度(縫製・快適さ・機能性)」です。私も審査員の一人として参加しました。
◆【学生/アマチュア部門】の受賞デザイナー・作品
■【グランプリ】YURI ANAYAMA/穴山友梨さん
「No cut」と題した本作は、ハサミを使わず、シルクスクリーンや染色技法によって衣服の傷や汚れを覆い、新たな表情へと導くアプローチが特徴です。グラデーションの黒染めを施した後、市松模様のテキスタイルプリントを重ねています。誰かの思い出を宿した衣服だからこそ、ハサミを入れずに生まれ変わらせることを意識したといいます。市松模様に込められた「永遠」や「繁栄」の意味も相まって、衣服を長く愛用してほしいという思いが感じられました。さらに、取り外し可能なディテールやレイヤードの自由度の高さも魅力です。日常に寄り添いながら着こなしの幅を広げる提案として、完成度の高さが際立っていました。
■【準グランプリ】yui wakabayashi/若林唯さん
「日常にときめきを纏う服」をテーマに、思い出の詰まった古着の魅力を活かした作品を発表しました。華やかさと日常性のバランスを取りながら、元の形や素材の魅力を尊重したデザインが印象的です。セレモニーで着用されていた素材をメインに使用。出番が限られがちな服を、日常でも楽しめる「大人かわいい」デザインへと昇華しています。幼少期に着ていたサイズアウトした服や、仕事で着用していたユニフォームなど、異なる背景を持つ服を再構築。華やかさを残しながら、日常に取り入れやすいスタイルへと落とし込みました。セレモニーと日常を横断するスタイル提案に、着る楽しさと新たな価値が表現されていました。
■【特別賞】SHINOBU TOMITSUKA/冨塚忍さん
「post period」というコンセプトのもと、衣服に刻まれた時間や記憶を再解釈しています。円形モチーフを連ねることで、新たな物語の連なりを表現した作品です。コートをベースにしたデザインで、背面には「四六時中」を意味する46個の円形モチーフを、鱗のように連ねています。着る人の思いやストーリーを受け継いでいきたいという意図が、象徴的に表現されています。円というコンセプトを立体的に捉え、曲線的なパーツをつなぎ合わせることで、新たなかたちが生まれ、さらに次へとつながっていくような広がりを感じさせます。ジャケットやスカートにもその手仕事の技が生かされたコレクションに仕上がっていました。
◆プロ部門の受賞デザイナー・作品
■【グランプリ】MAISON CASANOVA/中村有佑さん
「NO GUNS JUST ROSES」と題されたコレクションは、戦争の象徴でもあるトレンチコートを再構築し、平和へのメッセージとサステナビリティの視点を重ね合わせています。ミリタリーの要素を洗練されたたたずまいへと昇華しながら、レイヤードによる多様な着こなしも提案されていました。元の衣服のデザインや記憶を尊重し、それらを可能な限り活かしながら再構築している点も印象的です。制約のある中でのデザインは難易度が高いものの、モード感とシックな雰囲気を両立し、完成度の高い仕上がりとなっていました。今の世界情勢を反映した時代性を示すと同時に、商品性の高さも際立っていました。
■【準グランプリ】KOHVA/秋山和美さん
「Two Ways」をテーマに、1着の中に複数の表情を持たせるデザインを作り上げました。ギャザーの動きによってシルエットが変化し、日常の中でさりげなく変化を楽しめる点が魅力です。元の衣服の特徴を尊重しながらも、モード感のある仕上がりが印象に残りました。モード感とシックさを両立したコレクションは手持ち服に合わせるだけで装いを格上げしてくれれそうです。
■【特別賞】Masaco Teranishi/寺西昌子さん
「記憶を纏う服」をテーマに、誰かの思い出を引き継ぐようなリメイクを提案しました。旅の記憶や風景を想起させるディテールに、チュールやレースを取り入れた現代的な感性が融合し、ロマンティックで詩的なコレクションに仕上がっています。リラックスした時間に着ていた服や、衣装として着用されていた服、さらに海外での特別な時間を彩った服など、異なるシーンで愛されてきた衣服を重ね合わせて再構築。それぞれの記憶をつなぎ合わせることで、新たな物語が生まれました。
【審査員】(敬称略)
俳優・モデル 高橋愛
ファッションジャーナリスト 向千鶴
ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江
ファッションプロデューサー・服飾専門家 しぎはらひろ子
ウェブサイト Shift C(シフトシー)編集長 浦田庸子
リトルライツ合同会社 クリエイティブ・ディレクターテンダーパーティ編集部 ファウンダー 佐藤由佳
コンサルタント 福田稔
GINZA SIXリテールマネジメント株式会社代表取締役社長 山崎敏子
株式会社大丸松坂屋百貨店 代表取締役社長 宗森耕
高橋愛氏、宗森耕氏、浦田庸子氏、佐藤由佳氏の総評もありました。
コンテストを通して感じられたのは、単なるリメイクにとどまらず、「記憶」や「時間」といった、目に見えない価値をいかにデザインへ落とし込むかという視点です。はさみをつかわない、デザインを大切にしているという意味で、デザインをリスペクトして使い捨てにしないというのも大きな魅力です。アップサイクルは制約のある創作である一方、その制約こそが新たな発想を生み出す原動力にもなります。
ファッションを楽しみながら、社会課題にも向き合う――。「roop」の取り組みは、これからの時代の新しい価値のつくり方といえそうです。今回の作品からは、その可能性がしっかりと伝わってきました。今回のアイテムは「AnotherADdress」でレンタルができるようになる予定だそうです。特別な1着をまとう時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。
roop特設サイト:https://www.anotheraddress.jp/roop
AnotherADdress公式サイト:https://www.anotheraddress.jp/
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ファッションデザインコンテスト「roop Award 2025-2026」の審査員として登壇しました
https://riemiyata.com/work/90038/

















